2016年12月5日月曜日

深センに行ってきた:世界がアプリエコシステムを作っているときに中国はインフラを作っていた

みんなでレストランにご飯を食べに行き、支払いは割り勘の場合どうしますか?

日本だとお会計をもらって、一人頭いくらか計算して、みんなが現金で幹事さんに払って、幹事さんがカードなり現金なりでお店に払うというのがまだ主流かなと思います。

アメリカだと2つあって、5人ぐらいまでなら全員が自分のクレジットカードを出してお店に渡し、お店側が全てのクレジットカードに等分した金額を請求してくれる。もうちょっと人数が多い場合は一人が支払って、他のみんなに Venmo、Square Cash、PayPal、Android Pay、Google Wallet、Facebook Pay などの複数のアカウントを伝え、どれでもいいから送ってねーという感じになる。これが一社独占になっていないのがアメリカらしさで、まだまだアプリの群雄割拠があり、それぞれが切磋琢磨して成長していくアプリエコシステムになっている。アメリカでは現金をあまり持ち歩かないので、それ以外の手段がどんどん発達していく。

で。深センももちろん現金で割り勘もするのだけれど、個人間送金も含めて WeChat Pay が電子決済ほぼ一択のインフラみたいになっている。個人間送金、小さなお店から大きなお店、レストラン、屋台に至るまで、どこでも何でも手数料なしで WeChat Pay で支払いができるのだ。

WeChat Pay については、今回一緒に深センに行った id:secondlife さんが詳しくブログに書いている。
すべてが電子決済出来る街、深セン

例えばこの小さなエレクトロニクスのお店のショーケースの端には WeChat Pay、AliPay、そしてWeChat の QR コードが貼ってある。これらにアクセスして、WeChat で店主とやり取りをして商品を購入したり、購入後もコミュニケーションが続いたりする。マクドナルドで WeChat Pay で何か買うと、クーポンが送られてきたりする。現金やクレジットカードだと支払いをして終わってしまうが、その後のエンゲージメントが WeChat Payだと単なる決済とかなり異なるのだ。

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コンビニやマクドナルド、フードコート等でも WeChat Pay で支払いができる。

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なお、WeChat Pay は中国の銀行口座を持つか、誰かからお金を受け取るかしないと使うことができない。今回の参加メンバー間では WeChat Pay を使い始めるために、1元が飛び交いあった。

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もちろん AliPay も色々なところで使えてはいたのだが、少なくとも深センでのマーケットシェア的には圧倒的に WeChat Pay な感じだった。Mary Meekerのレポートでも WeChat PayのトランザクションがAliPay の 5 倍であると推測されている。

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華強北は深セン屈指の電気街で、その大きさは秋葉原の10倍だとも言われている。その規模がどんなものかというと、ビル一棟ほぼ全てスマホケースを売っているビルがあったりとか。小さな商店の集まりのビルをじっと眺めている感じだと、iPhoneのカメラだけを売っているお店が100軒とかiPhoneのディスプレイだけを売っているお店が100軒とかある感じ。数えたわけじゃないけど。で、それぞれが一個単位では売らず、100個単位とか1000個単位とかのバルクで売っていく。更に言うとこの「店舗」はあくまでディスプレイに過ぎず、彼らの売上の多くは Taobao や AliExpress のようなオンライン店舗から上がってくるらしい。

「何でもオンラインで買えて、何でも電子決済できちゃう深セン」。これはあくまで深センという特殊な街のことであって、中国全土ではない。。。と聞いている。が、Alibaba の創業者 Jack Ma は「アメリカではeコマースはデザートでしかないが、中国ではメインコース」だという。

"In America, e-commerce is dessert. In China, it is the main course." -Jack Ma, Founder of Alibaba

今年の11/11、「独身の日」商戦でアリババはたった1日で1兆7000億円を売り上げている。ちなみに今年の Amazon の Prime Day の売上が $525 million、Alibaba の Singles Dayの売上が $17.8 billionだ。
BBC: 中国「独身の日」商戦でアリババが1日で1兆7000億円の売り上げ
Fortune: Prime Day Was Amazon's Biggest Sales Day Ever
CNBC: Singles' Day: Alibaba smashes records at world's largest online shopping event

なお、深センではQR コードがめちゃめちゃいっぱい使われている。お店に行っても会社を訪問してもレストランに行ってもQRコードを見かける。

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深センでランチを食べるために入ったレストランのテーブルにはこんなシールが貼ってあった。「23a」というのがこのテーブルのことなのだろう。

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QRコードにアクセスしてみると、こんなサイトにつながった。ここからメニューのランキングを見たり、食事を注文することができるようだ。(我々は既に店員さんに直接注文してしまっていたのでこのインターフェースを使って注文することはなかったのだが。)

なお、私のスマホは中国語のサイトを自動で英語に翻訳する仕様にしているので英語になっているが、実際は中国語で表記されている。

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誰もがスマホを持てるわけでもないし、どのレストランもが各テーブルに注文用のタブレットを置けるわけでもない。紙に印刷すればいいQRコードの投資額は著しく低く、携帯電話を持っていない人は今やほとんどいない時代だ。それぞれのお店がアプリを持つよりも紙でQRコードを読ませてサイトに飛ばす方が効率がよいのかもしれない。

ちなみにベイエリアで今起こりつつあることとしては、更に先をいく「支払いプロセス自体のスキップ」だ。わかりやすい例だとライドシェアリングサービスの Lyft がある。どこかに行きたいと思ったら、Lyft のアプリを開いて、自分がいる場所(ピックアップしてほしい場所)を確認の上、行き先の住所を入力する。相乗りサービス(Lyft Line)を使いたい場合はそれを選択し、ドライバーが捕まるのを待てば、車がやってきてくれる。目的地に着いたら、支払いプロセス自体がなく、降りれば登録済のクレジットカードに勝手に請求が行く。(チップを追加したい場合は追加する。)お財布を開くとか、クレジットカードを出すとか、アプリで支払いをするとか、料金交渉をするとか、そういう物が全部すっとばされて勝手に請求されて勝手に料金が落とされる。これが非常に楽なのである。

似たような形で、サンフランシスコには事前に顧客が登録する形式のカフェができていて、注文したら勝手にその分請求しておいてくれるそうな。私はまだ行ったことがないし、支払いスキップが流行るかはわからないけど。

12/8 追記
。。。と思ってたらやっぱり来ましたね。Amazon Go.
Amazon Go アプリを入れて、お店に買い物に行き、好きなものを取って、終了。支払いの行列なし、これぞ「支払いプロセススキップ」ですよ。コンピュータビジョン・センサーフュージョン・ディープラーニングを使って商品が商品棚から取り出されたり戻されたりというのをトラッキングしてバーチャル買い物かごで勝手に決済。



深センに行ってきたシリーズ
1. 準備編
3. 物を作れる人類が住む街で

他の参加者の皆さんのブログはこちらにまとまっています。

Disclaimer このブログは山崎富美の個人的なものです。ここで述べられていることは私の個人的な意見に基づくものであり、私の雇用者には一切の関係はありません。