2012年6月8日金曜日

Big Tent

3 月にマウンテンビューに出張に行った際、たまたま少しだけ Big Tent というカンファレンスに参加することができました。(出張中だったので会社を抜けだしてほんの少しでしたが。。。) 

帰国してから世界各地で行われた Big Tent の動画を見ているのですが、非常に面白いので、少しずつ紹介していこうと思います。 

Big Tent とは、様々な視点をもった人(政治家や官僚、ビジネスマンや NPO、アクティビストやブロガーなど)が集まって重要な議題・テーマについて意見を交わす会合で、元々は Google がヨーロッパで始めた物。それが今、全世界に広がり始めています。

日本でも、7 月 2 日に仙台で開催される予定です。
「自然災害と IT 活用に関する国際会議」を仙台で開催します

2011 年 12 月にハーグで開催された Big Tent The Hague は言論の自由をテーマに開催され、米国務長官 Hillary Clinton とオランダの Rosenthal 外務大臣はじめ多くの政府関係者が参加しました。

ブログ記事:A Big Tent for free expression in The Hague

エリック・シュミットいわく「ここには自由な言論を止めようとする人と戦おうと思っている人が集まっています。政府が『それは気に入らないので検閲する』と言うのは簡単です。だけど、このカンファレンスはそれは正しいことじゃないってことを述べるために開催しました。」

 ハイライト動画:



Hillary Clinton による Big Tent The Hague の基調講演が秀逸。Hillaryの口からこういう発言が出るのは、素晴らしいことだと思います。ざくっとメモ。



世界人権宣言から 63 年。インターネットの自由と人権を守ることは、世界中で重要になってきました。どこの誰であろうと、人権が守られなければいけません。 

インターネットはあらゆる重要な局面で必要になっています。そんな中、人権はオンラインでもオフラインでも、守られなければいけません。人々が意見を表明する権利、信条に従って行動する権利、政治的・社会的変化を起こすために平和的に集会をする権利。集会は街角だけではなく、ネットのチャットルームでも集まることがありえます。前世紀には、物理的世界での人権が問題とされてきましたが、今はサイバー世界での人権についても考えていかなければなりません。 

世界では、国家による検閲、オンラインで書いたことに起因した投獄、インターネットの遮断、集会ができないように捕らえられることなど、様々な問題が起きています。例えば、シリアではブロガーが拘束されています。シリアとイランでは、オンラインアクティビスト達が意見を表明したり集会を開催することによって拘束されたり殺されたりしています。ロシアでは著名ブロガー Alexey Navalny さんが選挙に対する抗議記事を書いたことで投獄されました。中国では、企業が自主管理や自主規制を強化する(strengthen self management, self restraint, self discipline)という文書にサインをさせられています。 

人権は世界中のどこにいても、尊重されなければなりません。 

インターネットは今も成長しています。インターネットは有限ではないし、競争的でもありません。つまり、自分がインターネットを使っているから他の人の分が減るということはありません。逆に、たくさんの人が使えば使うほど、みんなにとってインターネットがより価値の高い物になっていくという性質があります。こうしてインターネットによって、人々がつながり、イノベーションが生まれ、距離やコストによって今まで不可能とされていたことが可能となるのです。 

そんなインターネットを、今、守っていかないといけません。今まだインターネットを使っていない、次世代のユーザーたちがたくさんいます。20年後にはインターネットは現状の倍になると言われています。今我々が何を行うかが、そんな次のネット世代にとってのインターネットの意義を広げるのか、制限してしまうのかに影響していきます。オープンで自由なインターネットを守るために、一緒に活動をしていきましょう。 

経済のためのインターネットや社会的なインターネット、政治のためのインターネットがそれぞれ存在するわけではありません。インターネットは一つしかないのです。このたった一つのインターネットを守ることが、モバイル・デスクトップそれぞれでできること、政府ができることとできないこと、人々ができることとできないことに影響していきます。 

企業の皆さん。皆さんが販売しているツールが抑圧的な政権に使われているケースがあります。政治的言論を行なっていたアクティビストによる SNS 利用を阻んだり、抑圧的な政権がネット上で検閲をしたり、国民に対してスパイ活動を行ったりするのに使われています。こうした技術を売るのをやめましょう。これらは、人権侵害にあたります。 

よく、企業の皆さんは「何をしたらいいか教えてくれ。マニュアルをくれればその通りやるから」ということをおっしゃいます。マニュアルを待っている時代じゃないんです。正しい公式なんてありません。自分で賢く先回りして考え、素早く動く必要があります。 

クリティカルシンキング、自らに難しい問題をつきつけることが必要です。自分が作っているサービスが、政府によって市民をスパイする活動に使われることはないか。もし政府のセキュリティ当局が令状なしに自社にやってきてユーザーの情報を出せと言ってきたらどうすべきなのか。こうした難しい事態へ対処する方針を企業のトップや経営陣がきちんと考え、行動することで責任ある企業が生まれていきます。 

自由でオープンなインターネットを保つことは、インターネット企業のためだけではありません。全ての企業のためになります。今やインターネットが関係ないビジネスは少ないからです。

政府の皆さんは、自国民の人権、自由な情報の流れ、相互運用性などのルールについて考える必要があります。インターネットを国家がコントロールしようとする動きがあります。国によってはサイバースペースに国家的バリアを築こうとしているところもあります。インターネットを分断化することは、デジタルなバブルを作ることになり、グローバルにつながったネットワークを作るのと逆の方向になります。それでできるものはエコー室のようなものになり、経済的、社会的、政治的なやりとりやグローバルなアイディアが交わされ、イノベーションが生まれる、そんなインターネットの良さは失われてしまいます。 

アメリカではよく、「If it ain't broke, don't fix it- 壊れていない物を直そうとするな」と言います。インターネットに関することは、一つの国、一つの地域の活動ではどうにもなりません。この会議を通じて、共有された方針、政府間のプラットフォーム、地域を超えたグループとパートナーシップを作っていきましょう。 

また、抑圧的な国家によるサイバーアクティビストやブロガーへの弾圧からのサポートをお願いしたいと思います。弾圧されているライターやエディター、フォトジャーナリストなどのうち、半分はオンラインジャーナリストだと言われています。 

インターネットをオープンな場に保ち続けるにはどうしたらよいのか、考えていきましょう。 

政府によってはインターネットに壁を作り、ビジネスはオープンだけれど言論に関してはクローズにしようという国もありますが、そんなのは「独裁者のジレンマ」です。オープンなインターネットこそが、強い国家、国家の繁栄に貢献するでしょう。

我々の賭けに賛同してください。我々はコンピュータに賭けているのでも携帯電話に賭けているのでもありません。我々が賭けているのは、人間の精神、そして人間そのものです。インターネットをオープンかつ安全な物に保つことが、そのビジョンやゴールにつながっていきます。

 もう一つ、Big Tent The Hague で、 Eric Schmidt が質問に答える質疑応答の動画。何が素晴らしいって、Eric は今世界中を飛び回っているので、どこの国のどの省庁の誰が何に詳しいかをとてもよく知っている。質問に対して、自分の見解ももちろん話すけれど、オーディエンスの中の有識者を名指しで引っ張りだして回答を引き出していく。たいていの人はその人のことを知らないと思うのだけれど、その人達を紹介して、素晴らしい見解を述べさせていけるのは Eric ならではだと思いました。



 もういっちょ。2011 年 5 月にロンドンで開催された Big Tent London。 

テレビのプロデューサーPeter BazalgetteMumsnet の創業者 Justine Roberts、イギリスのU.K. Culture Secretary Jeremy Hunt そして Google からは Eric Schmidt、Google Ideas の Jared Cohen、エジプトのアクティビスト Wael Ghonim を始めとするたくさんの Googler 達、そしてたくさんの NGO、政策アドバイザー、テクノロジービジネスとジャーナリストなど、様々な人が参加しました。

ブログ記事:Inside the Big Tent

問われた質問は:
What was the role of technology in the revolutions in the Middle East?
 What are the limits of free speech online?
 Do we need tougher privacy laws or are we in danger of stifling innovation?
 Can technology and access to information be used to help prevent conflict? 

中東で起きた革命におけるテクノロジーの役割はなんだったのか? 
オンラインの自由な言論に対する制約とは? 
プライバシー法を厳しくした方がいいのか、そうするとイノベーションを阻害してしまうのか? 
テクノロジーと情報へのアクセスは紛争を止めるのに役立てることができるのか? 

ハイライト動画:



ドバイの Google で マーケティングマネージャをやっていた Wael Ghonim が、エジプト革命の時にエジプトに行って活動に参加した時の話がインタビューされています。



とりあえずメモ。 

なんでエジプトに駆けつけたの?とか、あの時ムバラク政権を倒せると思ってたの?などの質問から始まり、最初は政権を倒せるとは思っていなかったところからどうやってあそこまで大きな結果を出すに至ったのかを聞いていきます。オンラインの活動がリアルの活動につながっていくさなか、チュニジアの様子が伝わってくるにつれ「チュニジアよりエジプトの方がひどい状況なんだから、我々も立ち上がらなきゃ」という機運が高まっていったそうです。 

エジプトの過去の抗議活動は数百人規模で、だいたいつぶされる。二度とやらないように、もしくは他の人が参加したくなくなるように、文字通りつぶされてきた。ところが、今回の革命でタハリール広場にあれだけたくさんの人が集まった。通常は捕まらないように抗議をするのだけれど、今回は、政権側に対して「1/25 に会おう」とわざわざサイトに掲載。日時場所が事前予告されている抗議活動なんて初めてだった。 

みんなが集まるのか不安はなかった?という問には、「楽観的に考えていた。誰もがどうやったら他の人が道に出るようになるかのアイディアを考えていたし。」この後の質問でも、Wael は何度も「楽観的 (optimistic)」という単語を使っていて、「楽観的に考えないと。悲観的(pessimistic) に考えても、変化は起こせないよ」と言っています。 

そもそも、自分がリーダーだったとはあまり思っていない。ムーブメントの一人として活動していたし、wisdom of the crowd(群衆の叡智)が大事だし、革命に参加したみんなが国のことを思って活動していた、とのこと。 

エジプト革命はインターネット革命だったのか。もちろんアナウンスはネットを使ってオンラインで行われていたし、初期の頃の活動はオンラインで始まっていたし、人を動かし、情報を与えて教育し、メッセージがバイラルにたくさんの人に伝わっていったのはネットの力だった。ただ、1月25日の時点ではインターネットの役割は非常に大きかったが、26日、27日と活動が続くにつれ重要性は薄れていき、インターネットの役割は起きていることをカメラで撮って伝えることにシフトしていった。 

エジプトのインターネットブラックアウトは活動にどう影響したのかという質問に対しては逮捕されていたのでわからないけど、結果的にはネットをブラックアウトしたことで、抗議活動に興味がなかった人・参加していなかった人々も街に出て抗議活動に参加することになり、政府の完全な戦略ミスだったと思う、と Wael は語っています。 

「西側諸国は我々を苦しめてきた政権をずっと支持してきた。エジプトでは民衆側はほぼ外国の援助などない状態だった。アメリカは1月25日・26日の時点でもメディアを使って政権を支持する、政権は安定している、などと言っていたことことを忘れてはいけない。今後について、人々が自ら立ち上がることが重要なので、口を出してこないでほしい。変化は人々の中から起きる物。イラクではたくさんの人が命を落としたけれど結局何も変わらない。人々が自分で自分の運命を決めていかなければダメだと思う。中東・エジプトの人達はアメリカから"民主主義はこうあるべき"とか言われたいと思っていない。エジプト人が自分で解決の道を見つけるのでなければいけない。助けるつもりで手を出しても、介入してきたらエジプト人を怒らせるだけだと思う。Interest(利害)ではなくvalue(価値)で考えないと。エジプトはアメリカ人にとっては石油バレルにしか見えていないのでは。」

質問「こうした革命における企業の役割は?社員が革命に参加する自由を企業はどう与えるのか?」回答「Googleは関係ないよ。"Waelのプロジェクトは革命だから何でもしていい"なんてことにはならない。上司には緊急事態だから帰らなければいけないと断って去っている。企業は関わるべきじゃない。企業が民主主義とは何かとか教えたり民主主義を提供したりするとか、ないよね。そこは立ち入るべきじゃない。ツールを提供するのはありうるけど」

 同じくロンドンでの Eric Schmidt の基調講演の動画はこちら。



ざくっとメモ。Wael の勇気を称える Eric。 

インターネットの歴史はもう随分長いと思っている人もいるかもしれないけれど、自分はまだまだ始まりに過ぎないと思っている。歴史というのはまっただ中にいるときは「歴史」には見えないんだけれど、実は今まさに我々は「歴史の 1 ページを作っている」といえるでしょう。日本の地震や津波に対して人々がネットを使って人を探したり、資金調達をした。エジプトでもネットが活躍しました。 

こうした中、近年、政府のアカウンタビリティがとても重要になってきました。 

昨今の抗議活動は、Facebook でスケジュールを調整し、Twitter でコーディネーションが行われ、YouTube で世界に向けて何が起きたか発信する、という形になっています。 

我々が考えるべき課題は色々ありますが:
どうやってプライバシーを侵害せずに世界をよりオープンにしていくか。
どうやって無政府状態を生むことなく人々をエンパワーするか。
どうやってデータ量の爆発的な増加に対応するか。 

インターネットを遮断したらどうなるか。国の民主化、ハイチや日本の東北のような人道的な活動、経済的成功や雇用機会。。。たくさんの物を失うことになります。 

イノベーションはどこから来るかというと、世界を違う目で見ている人が作るもの。現状を受け入れず、違う物にしたい、よりよくしたいと考えている人。そして自分がそうでないなら、そういう人の考えに従えばいい。 

最近面白いな思っているのは、しゃべれば、相手には違う言語の音声に翻訳されるテクノロジー。スマホに向かって英語でしゃべれば、その音声がボイスデコーダーでクラウド上でテキストになり、それが更に翻訳されたテキストになり、スピーチジェネレーターで相手の言語(自分が喋れない言語)になって伝わる。しかも無料。1950年代にはクレムリンとホワイトハウスでしか使われていなかったような物が、誰でも無料で手に入るようになった。Android のアプリで、色盲の人が物に向かってかざすと、画面上にきちんと見えるように変換してくれるという物もある。 

インターネットは、アメリカでは640億ドルの経済効果をもたらし、イギリスでは GDP の 7.2% がオンラインからもたらされており、これは製造業よりも大きいという。フランスでは 2015 年までにインターネットが 41万もの雇用機会を作り、イスラエルでは GDP の 6%がインターネット関連。

もっと、世界をよりよい場所にしていきましょう。 


このブログは山崎富美の個人的なものです。ここで述べられていることは私の個人的な意見に基づくものであり、私の雇用者には一切の関係はありません。