2012年5月6日日曜日

今の時代のテクノロジーイベント

今の時代のテクノロジーイベントが、自発的かつグローバルになっているという話をしたいと思います。

●事例その1:TEDx

 以前、TED と TED Active と TEDx の話をブログに書きました。今や色々な別プロジェクトもできていて、 TED Salon とかここに書いてない物も始まっていますが、とりあえずここで抑えて欲しいのは、TED Conference は招待制で、招待されても参加費6,000ドルと高額で、かつ年に一回しか開催されない 。そんな TED がライセンスを開示し、世界中の各地で、有志が TED とは独立して開催するイベントが、TEDx。TEDは TEDx の運営には関わっていません。

こうしてライセンスをオープン化することで、TEDx イベントは既に 3,000 を超える数、開催されています。  先月の一ヶ月だけで、238個のTEDxが世界中で開催されました。自分の街や、自分の大学などで TEDx を開催したいと思った人が、「TEDx » Organize An Event」を読み込み、ライセンス条件をきちんと確認する。そして、「TEDx » Organizer Resources」を活用して、開催していきます。



 「なんでうちの街で TEDx を開催してくれないんですか?」は間違っていて、やりたいと思った人が、やりたいと思った日に、やりたいと思った場所で、自ら開催していく。それが今の時代のテクノロジーイベントの潮流になってきていると思います。

TEDx だけではありません。

●事例その2: NASA Hackathon

International Space Apps Challenge こと NASA Hackathon の時も、その声は聞かれました。全世界 24 都市で開催されたこのグローバルハッカソン。



「なんでうちの国では開催してくれないんですか?」「なんでオーストラリアでは四都市も開催してくれているのに、日本では東京だけなんですか?」

 違うよ。開催して「くれる」のを、待ってちゃだめなんだ。 

「日本では東京がやってる」んじゃなくて、東京に「やろう!」と言い出した人たちがいたから、開催された。あなたの街でやりたかったら、自分で開催するのだ。それが今の時代のテクノロジーイベントのあり方なんだと思います。プロのカメラマンじゃなくてもConsumer Generatedな写真で高品質なものがあり、プロの作家じゃなくてもConsumer Generatedなブログで高品質なものがあり、プロのクリエイターじゃなくてもConsumer Generatedな作品で高品質なものがあり、プロのイベント屋さんじゃなくてもConsumer Generatedなイベントで高品質なものは作れる。実際、NASA Hackathonも運営は全員ボランティアで手弁当だった。でも、賛同してくれる人たちからご飯代とかTシャツ代とか色々なサポートが入って、楽しくて素晴らしいイベントを開催することができた。 

同様の例を、今ぱっと思いつくだけでもいくらでも挙げることができる。

●事例その3: Global Android DevCamp

Global Android DevCamp。これは、Googleが言い出したものでも承認したものでもなく、世界中の Android 開発者たちが、「世界中で同じ日に Android のハッカソンをやったら面白くね?」と言い出して、昨年の 2月17-19日に開催されたもの。開催地は以下の通り。




  • Africa


    • America


    • Asia


    • Europe


    • Oceanian


    • この時も、「なんで日本は京都だけで開催されてて、東京で開催してくれないんですか?」という声があったけど、答えは「京都にはこの情報をキャッチして、やろう!と思った人がいた」ということ。東京には、情報をキャッチする人がいなかったか、キャッチしてもやらなかったかのどちらかです。こういうイベントの開催の特徴は、ひとつはオープンなこと。もうひとつはグローバルなこと。日本の開発者も、ぜひ、グローバルかつオープンに呼びかけられた「一緒に開催しないかい?」という声に耳を傾け、情報をキャッチして、グローバルなムーブメントを一緒に楽しんでもらえればと思います。オーガナイザー同士が仲良くなったり、開発者同士が仲良くなったり、教え合ったり、色々なつながりができていきます。そういうポジティブループに日本人が除外されてしまうのはもったいない。

      ●事例その4: DevFestX

      DevFestX は、実は世界で一番最初に、今年の2月11−12日に、日本の札幌で DevFestX Sapporo として開催しました。DevFestX の名前とコンセプトを考えたのが私なので、当たり前ですが(笑)Google が開催するのが Google I/O とか、Google Developer Dayとか Google DevFest とかのテクノロジーイベントだけど、開催地も開催日も内容もすべて Google が決めるもの。それに対するアンチテーゼとして、開催地も開催日も内容も、すべて Google 社員ではない開発者の皆さんが決めて開催するイベントをやったらどうだろうか、という発想で始めたものです。なので、これは Google DevFest ではなく、"Googleではない DevFestX" なんです。テーマはもちろん Google の開発者向けテクノロジーについて学ぶイベントなわけですけれども。

      「なんで札幌なんですか?函館でもやってください」という人がいたけれど、それは違う。Google が札幌で開催しようと決めたわけではなく、札幌の開発者の人たちが、「Google のテクノロジーについてみんなで学ぶカンファレンスを札幌で実現したい!」と声をあげてくれて、運営してくれたからこそ開催した、画期的なイベントなんです。それに対して Google が支援の手を出すのはもちろんですが。"札幌でやりましょう!"という声があってこそ、やりましょう!となった。"札幌に皆さんに来ていただくなら、雪まつりの時がいいですよ!"という地元の方のご意見があったからこそ、雪まつりとの同日開催が実現したわけです。

      札幌の開催を聞いて、同日開催でインドのニューデリでも DevFestX New Delhi が開催されました。その後、 DevFestX は世界中に広まり始めていて、例えば直近では 5/12 には DevFestX Korea が韓国で、5/19 には DevFestX Bangalore がインドのバンガロールで開催されます。すべて、「やろう!」と思った人が、主催者です。

      ●事例その5: Global Dart Happy Hour Hackathon

      来週末東京で開催する Global Dart Hackathon も同様です。Dart という新しいプログラミング言語が出てきて、世界中の人が学びたいと思っている。けど、なかなか機会がない。よって、みんなで集まってハッカソンをしよう、と。開催場所は以下のとおり。日本も、「東京会場」が入っています。

      Silicon Valley (Mountain View), CaliforniaApril 27-28
      Prague, Czech RepublicApril 27-29
      Tel Aviv, IsraelApril 27-28
      Tokyo, JapanMay 12
      Seoul, KoreaApril 28
      Chandigarh, IndiaApril 21-22
      Goa, IndiaApril 21-22
      Manipal, IndiaApril 22
      London, EnglandMay 11-12
      BVCOE, New Delhi, IndiaApril 20-22
      Bangalore, IndiaApril 21
      Punjab, IndiaApril 21-22
      Bacolod City, PhilippinesApril 28-29
      São Paulo, BrazilApril 21-22
      Surabaya, IndonesiaMay 12
      Lisboa, PortugalMay 5
      Lviv, UkraineMay 12

      このイベントも、最初は同じ日に開催しようと言われていたのですが、候補日程は必ずどこかの何かとかぶる。特に、4月末〜5月頭は日本ではゴールデンウィークがかぶるので、日本は頑強に戦いました(笑)全世界で統一の日での開催は難しいということで、結局各地がバラバラに開催することに。これのメリットは、先にやった会場から「こんなのできた」とか「こんなことで困った」とかの情報が出てくること。それをシェアすることで、どんどんイベントの質が上がっていくのではないかと思います。

      技術者の多いインドはほぼ同日開催で6都市も参加、新しいテクノロジーが大好きなテルアビブの開発者達ももちろん参加、当然シリコンバレーも東京も参加。こうして色々なイベントに関わっていく中で、最新テクノロジーを貪欲に求めながら進んでいく開発者・都市とか、枯れた技術を中心に着実にビジネスを回していこうとしている開発者・都市とか、国ごとの寛容性とか、結構色々な傾向が、開催地にも、あと開催した時のストリームでも見えてきて非常に面白い。

      インドでは 6 拠点を Hangout でつないで開催してたり、アメリカで Dart の developer relations をやっている Seth Ladd が Hangout でつながっていて質問に答えたりと、つなぐところも色々工夫していたようです。そういえば NASA Hackathon でもオーストラリアは4拠点もあったので、中継でつないでいて、最終発表とかもネットでつないで合同でやってました。

      あと、同じインドで開催する、同じハッカソンなのに、申し込みサイトもバラバラで特色がでていて面白い。ちょっと紹介しましょう。

      BangaloreNew Delhi:Google App Engineで作られていて、スタンダードな感じ。


      Goa:なんとこれ、Google Spreadsheetで作られているんですね。超クール。私のお気に入り :)



      ChandigarhManipal : EventBriteを使っています。イベント運営としてはスタンダード。


      Punjab : こちらは Google Sites を使ってます。ところで、LPUって何かと思ったら Lovely Professional Universityなんですね。



      多分、イベント会社とかがグローバルにこういうイベントを運営しようとすると、すごくお金がかかったり時間がかかったりして、お金がかかると開催地が減らされちゃったりして、色々大変なわけです。Android DevCampとか、世界中の54都市で同日開催ですから、これをイベント会社が開催となると相当大変なことになっていたと思います。サイトも全部外注して統一したりとか。それよりは、今の「やりたい人がやる」「学びたい人が自ら開催する」「別にサイトがそれぞれバラバラでもいいじゃん、個性だよ個性」「イベントで重要なのは、コンテンツと、そこで誰と出会えるかだよね」的なノリで、どんどん面白いテクノロジーイベントが日本中で開催され始めるといいなあと思います。

      というわけで、結論。待ってちゃだめなんだ。


      追記:そういえばこないだロンドンに行った時に、日本で Music HackDay やらないの?と聞かれたのですが、企画している人いるのかな?すごい面白いらしい。

      Disclaimer このブログは山崎富美の個人的なものです。ここで述べられていることは私の個人的な意見に基づくものであり、私の雇用者には一切の関係はありません。