2012年1月28日土曜日

"海賊版をやめさせるには、海賊版よりもよいサービスを提供することだ"という話

Valve の共同創業者 Gabe Newellいわく、"海賊版問題をつきつめていくと、価格の問題ではなく、サービスの問題だということに行き着く。海賊版をやめさせるには、海賊版よりもよいサービスを提供することだ。"



一昔前、YouTube やニコニコ動画のような動画共有サイトが日本の違法アニメだらけになり、削除されまくり、それに抵抗するかのようにアップしまくる人たちがいて、不毛な戦いが繰り広げられていた。ニコニコ動画では「削除人」を投入し、違法なアニメをガンガン削除していった。

そのかわり、ニコニコ動画は権利者と交渉し、現在は最新のアニメを合法に一週間無料で視聴することができるようなサービスを提供している。もちろん有料会員にならなくても視聴できる。しかもこれは、古いドラえもんとかサザエさんとかじゃなくて、最新の、現在テレビで放映されているアニメで、一昔前なら違法コンテンツをアップする人がアップしてはニコニコが削除してという無駄な労力が支払われていただろう、そんなコンテンツだ。

合法にニコニコ動画で見られる最新アニメのリストはこちらから> ニコニコアニメチャンネル



更にニコニコ動画が素晴らしいのは、権利者と交渉して、時々「アニメの一挙放送」というのをやっていること。例えば今年の年始には、「東のエデンTVシリーズ一挙放送」や「東のエデン劇場版一挙放送」をやっていた。TVシリーズはワンクールなので5時間半ぐらい、劇場版は2本あったので4時間半ぐらいの長丁場。生放送なので一度限りであり、DVDを買う予定だった人がこれで買わなくなるということは考えづらい。どちらかというとDVDを買うようなユーザーは生放送があってもDVDを買うだろうし、どうせ買わないであろう人達の中でそのアニメの認知度を高め、ファンを増やすには非常によい施策だと思える。

アニメの制作側も「歓迎して」やっていると思えるのは、TVシリーズ放送前に監督の神山健治さん、プロデューサーの山本幸治さんと石井朋彦さんが自ら生放送に出演、劇場版放送前には神山さん・石井さんに加えて作画監督の中村悟さん、美術監督の竹田悠介さんが出演していたから。裏話を語り、本編を見る、という構成になっていた。アニメの制作側も、プラットフォームを提供するニコニコ側も、もちろん視聴者もハッピーになれる構図だ。

ニコニコアニメスペシャル一挙見ページ> http://ch.nicovideo.jp/channel/anime-sp

一挙放送の方でも化物語全部とからきすた全部とか灼眼のシャナ全部とか、最新かつ人気のアニメが揃っていることがわかる。「偽物語」が放映される前に前作である「化物語」を全部放送することで、視聴者の理解もエンゲージメントも高まるし、PRにもなる。



もう一つ素晴らしいことがあって、それは「タイムシフト視聴」という仕組み。「生放送の時間、外出しているので見られない」「有料会員になっていないので、生放送だと追い出される」という問題を回避するため、あらかじめ予約をしておけば、放送後一週間以内であれば、予約した生放送を後でゆっくり自分の好きな時間に「タイムシフト」で見ることができるという仕組み。私も「東のエデン一挙放送」の時間は外出しており、生では見られなかったのだが、「タイムシフト予約」をしておいたおかげで、後でゆっくり見ることができた。

(ニコニコ動画を見ている人にとっては「何を当たり前のことを今更。。。」と思われるようなことばかりだと思うけど、世の中には知らない人もいるのでね。)

また、バンダイチャンネルでは、「月額 1,000円でアニメが見放題」などのオンラインアニメ視聴サービスを提供している。違法アニメはどこに何があるかわからないけれど、合法アニメが快適に高品質で見られるようになっていれば、わざわざ違法アニメをアップするインセンティブも見るインセンティブもなくなっていく。

これらを踏まえて、"海賊版問題をつきつめていくと、価格の問題ではなく、サービスの問題だということに行き着く。海賊版をやめさせるには、海賊版よりもよいサービスを提供することだ。"という冒頭の記述を読むと、日本で行われている様々な試行錯誤は「海賊版よりよいサービスを提供」して、win-winを促進するための、一つの道だと思う。


もう一つ。最近の SOPA 騒動の時にバイラルした画像がこちら:

"SOPAが施行されたら、違法にマイケルジャクソンの音楽をアップしたら5年牢屋に入れられるよ。マイケルジャクソンを殺した刑はたった4年だったのにね"という物。


これを発端に色々な議論が沸騰したのだが、そのうちの一つに「違法にプロの歌を歌ってそれをネットにアップした場合」という話題があって、思い出したのが日本の動画共有サイトと音楽著作権管理団体との包括契約の話。YouTube と JASRAC(日本音楽著作権協会)、ニコニコ動画と JASRAC、更には JRC(ジャパン・ライツ・クリアランス)やイー・ライセンスはそれぞれ 2008 年頃に包括契約を結んでおり、YouTube やニコニコが収入の一部をこれらの団体に支払う結果、ユーザーは JASRAC 等の管理する楽曲を演奏したり歌ったりして、それらを合法に YouTube やニコニコ動画に投稿することができる。(もちろんアーチスト本人のプロモーションビデオ等はNG)ファンが合法に、自由に歌い、演奏し、踊る動画が増えていくのは、アーチスト本人にとっても嬉しいことなんじゃないかと思う動画が Lady Gaga さんのこれ。


この類の契約は当たり前に出てくる物ではなく、北欧は結構結べているらしいが、国によってはないらしい。問題や衝突は常にあるけれど、議論を重ね、お互いに win-win になる落とし所を早く見つけていくことが大事。日本はいち早くこうした議論と交渉を権利者団体とインターネットサービス提供者が行い、2008 年には解決していたことを誇りに思いつつ、今まだ問題になっている数々の問題についても議論を尽くして前向きに解決していければよいなあと思う次第。


そうそう、様々なジャンルのアーチストさんが公式チャンネルを YouTube に開設してくれているのも嬉しいことだ。やっぱ、違法な物より公式の物が見たいし、合法な物でないと安心して embed できないものね :)というわけで見つけたいくつかの公式チャンネルを下記にはっておく。
Phil Collins channel Eric Clapton channel Madonna channel Lady Gaga channel Jamiroquai channel
Spitz channel 宇多田ヒカル channel Bump of Chicken channel AKB48 channel




Disclaimerこのブログは山崎富美の個人的なものです。ここで述べられていることは私の個人的な意見に基づくものであり、私の雇用者には一切の関係はありません。