2011年9月18日日曜日

XDev2011 で Hack For Japan について講演してきました

Nikkei BP主催のIT技術者向けカンファレンス X-over Development Conference (略称 XDev)で講演をしてきました。今年のテーマは「明日を支える IT を創ろう」。

私は Sinsai.info の @Aganard さんと共に「復興のために技術者がやったこと、これからできること」というタイトルで Hack For Japan について紹介してきました。また、石野さん ( @wiraqutra) が展示ブースを行ってくださいました。

今回は 311 からもう6ヶ月もたっているということで、皆さんに当時を思い出して頂き、それから技術者が何をやってきたか、Hack For Japan では何をやってきたか、そして技術者の皆さんができることは、まだまだある。ということを再認識して頂ければ。。。と思って講演しました。

スライドはこちらに公開してあります。



講演は、一枚の写真から始めました。


3月。皆さんはこんな画像や動画をたくさんご覧になったはずです。この先日本はどうなってしまうのだろう。自分に何か出来ることはないか。自分のスキルを役立てられないのだろうか?日本中がそう思った瞬間が、ありました。

そして震災後数時間で、Google Person Finder や Sinsai.info のようなサービスが立ち上がりました。情報を求める人達のアクセスが自治体ホームページに集中し、落ちたサーバをインフラ系の技術者達が Twitter で情報交換をしあって、あっという間にミラーリングして閲覧可能にしました。ITの力が、色々なところで役に立っていく姿を目の当たりにしました。

  

「どうせ被災地でネットはつながらなかった。」と仰る方もいる。確かにそうです。ITは万能ではない。電話も、携帯も、ネットもつながらない地域はたくさんあったし、避難所での情報共有は紙が中心でした。でも、その紙で貼り出された手書きの名簿を携帯の写メで撮って picasa にアップして、それを被災地以外の人達が文字おこしをして検索可能にした。被災地の人も、被災地以外の人も、IT系の人もIT系ではない人も、「できる人が、できることをやる」。その連鎖が日本中で起きて、色々な取り組みが行われていました。


そんな中、我々 Hack For Japan も立ち上がりました。合い言葉は「コードでつなぐ。想いと想い」。会社の垣根を越えて、ビジネス上は競合同士の会社でも、この未曾有の危機を乗り越える為に一緒に考えよう。ということで始めました。



Google Moderator を使って、被災地の為にどんなサービスを作ったらいいのかアイディア出しを行い、Google Wave を使って、それらのアイディアについて深堀する為のディスカッションを行い、そしてプロジェクトとして固まってきたら、それを Google Spreadsheet に入れて概要を説明したりメンバーを募集したりする。更に最近はそれらのプロジェクトを可視化するためのサイトも立ち上がりました。こうして、アイディア立案→開発→リリースとPRという流れをサポートし、震災復興支援アプリが数多く生み出される 土壌を育むコミュニティを醸成すべく、この半年間活動してきました。



最初の ideathon/hackathon は震災から一週間たった 3/19-21に京都/福岡/岡山/徳島の4拠点で開催しました。このときは東日本はまだ余震が多かったので、全ての会場が西日本です。


イベントを一度やると、なんだか終わった気持ちになってしまうのが常ですが、この時点で我々が決めたことが一つあります。それが、「継続すること。風化させないこと。」少なくとも1年は続けよう。1年経ったらやめるという意味ではなく、被災地の様子は毎日、毎週、毎月変わるので、1年経ったらまたレビュー しよう。だけどそもそも「1年続ける」と決めて、やっていこう、と。

有言実行、ということで Hack For Japan の活動は脈々と続けられ、5/21-22には会津/仙台/東京/高松/福岡/ロンドンの5カ所で Hackathonを、7/23,24,30には遠野/会津/東京/仙台/愛媛の5カ所で Hackathon を行いました。




この7月の hackathon で、私は岩手県の遠野に行くと共に、大槌や釜石といった沿岸部の町を訪問してきました。7月なので、もう4ヶ月もたっているにも関わらず、瓦礫はうずたかく積まれ、道に大きな船がささったまま、家やお店も開けない状態の場所も多くありました。いかに瓦礫がきれいに撤去されたかという報道もなされていますが、まだまだそれはごく一部のことだということがわかります。まだまだ支援は必要だ、まだまだ我々は「被災者と共に」あらねばならない、と感じました。





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4月に福島の会津で行った "Hack For Fukushima" というイベントについてもご紹介しました。これは hackathon ではなくディスカッションする為のミーティングという形式をとりました。会津はもちろん、福島や郡山、関東や関西などたくさんの場所から人が集まってくれました。また、会津の町自体は福島原発から遠いのですが、会津には原発に近い町に住んでいた方々が避難されています。


もちろん議題の一つは「放射能」について。特に強いメッセージを頂いたのが下記二つ。

「正しい数値を知りたいんです」

「自分の目で確かめたいんです」

「正しい数値を知りたい」。。。このイベントを開催したのは4月ですが、SPEEDIのデータが4月まで公開されていなかったのを皆さん覚えていらっしゃるでしょうか。政府の指針がこちら。20kmは警戒区域で入ってはいけない。20-30kmは緊急時避難準備区域。


だけど、実際の放射能の広がり方って、風の向きや強さ、雨、地形などによるので、一概に何キロだから安全/危険と言える物ではない。SPEEDI のデータを見てもそれは明らか。。。


しかも、一刻一刻その情報は変わります。下記はある日の1時間毎のSPEEDIのデータ。1時間ごとに、これだけ変わる。そんな状況の近くで暮らしている方がたくさんおられます。


そんな中、Hack For Japan のメンバーの石野さんが作っておられる Android / iPhone アプリが「風@福島原発




このアプリを使えば、任意の場所からの福島原発の距離や官公庁の測定した放射線量、市民が測定した放射線量、AMeDAS の風向きと風速を見ることができ、更に他の被災地支援情報を見ることもできます。


また、多くのデータがPDFで提供されている中、風@福島原発では、自治体や文科省などから提供されているPDFデータを変換処理し、アプリで最適化表示するようにしています。アプリやサービスを使う人は、やはり使ってもらうのが嬉しいと想うのですが、風@福島原発は「外出する時は必ず風@福島原発を見てから」という方がおられる程、とても頼りにされているアプリなのです。

そんな「風@福島原発」を開発された石野さんは、当日 Hack For Japan のブースを運営してくださっていました!ということで会場にいらっしゃった方はラッキーにもご本人に会いに行くことができたのです :)

なお、普通の開発者は自分のアプリをたくさんの人にダウンロードしてほしい、そして使い続けてほしい、と思う物だと思うのですが、石野さんは早くこの「風@福島原発」を誰も使わないですむように、みんながアンインストールできる日が来るように願っている、と仰っていました。

Hack For Fukushimaでのメッセージ2つ目。「自分の目で確かめたい」。。。政府から公表されるデータが信じられない。自分で買おうにもガイガーカウンターは売り切れている。「ないなら作ろう」ということで、DIY でガイガーカウンターを作る人がとても増えています。中には高校生が作った Android 連携のオリジナルガイガーカウンターも。




Hack For Japan でももちろん、Hack For Geiger プロジェクトが立ち上がっています。こちらが Open Geiger Development Kit




そして「Open Geiger Development Kit」開発者の佐々木さん(@gclue_akira)も、福島の土を持参で、当日 Hack For Japan のブースにいらしてくださっていました!ということで会場にいらっしゃった方はラッキーにもご本人に会いに行くことができたのです :)

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次にご紹介したのが 7/23-24に岩手県の遠野で開催した Hackathon です。


Hackathon の会場は、「遠野まごころネット」さんにご提供頂きました。遠野まごころネットは、岩手県沿岸部のボランティアのハブになっている場所です。沿岸部は町も建物も津波にやられてしまっているので、ボランティアが行っても泊まる場所がない。よって、沿岸部から車で1時間程離れたこの遠野をハブに、各地に毎朝ボランティアが出かけて行き、夜帰ってきて泊まる。。という形になっています。下記は朝各地へ出かける前のミーティングの様子。

Hack For Japan のメンバーも、今回はボランティアの皆さんと体育館や畳部屋などの床で寝食を共にしました。



会場に来てくださった方には、様々な境遇の方がおられました。中にはご家族を亡くされた方、もう二ヶ月も学校を休んで、こちらでボランティアをしている方なども。


いつもの ideathon/hackathon はエンジニアが中心に、何を作ったらいいかを考えるわけなのですが、今回は実際に被災している方、ボランティアとして毎日被災者の方と接している方々がいらっしゃっているので、「ITを使って解決してほしいこと」「今、困っていること」などをどんどん挙げて頂きました。2日間のイベントではとても解決しきれない程たくさんの要望が寄せられ、ホワイトボードはあっというまに埋まってしまいました。「ITを使って解決すべきことは、まだまだたくさんある」と感じました。


全てのプロジェクトを立てることはできないので、厳選してチームにわかれ、ideathon/hackathon を行いました。


遠野会場で立ち上がったプロジェクトをいくつかご紹介。まず一つが「仮設ネットカフェ」。今回、Hack For Japan を行う前に、仮設住宅にも訪問し、お話を伺いに行きました。そこで聞いた現実の一つが、避難所と仮設住宅のギャップでした。避難所はたしかにたくさんの人がいてプライバシーもなく、大変だったのですが、人がいるので情報も回りやすく、 iPad なども共有されているのでみんなで YouTube を見たりと楽しむこともでき、何より人々がいるのでそこでルールを作ったり仕事を分担したりとみんなが動いていた。それが仮設住宅に入った途端、一人一人の個室となり、ネットもつながらないしデバイスもない、会話もない、亡くされたご家族のこと、なくなった仕事のことなど、一人で考えれば考える程がっくりしてしまう。。。という方がとても多いそうなのです。仮設住宅は効率的に作っている為に、ラウンジや人が集まるための集会所のような場所はないそうで、人との交流がなくなり、情報も入らなくなってしまっているそうです。

「パソコンは使えない。携帯の画面も小さすぎる。タブレットが使いやすい」という声があったので、ネット環境とタブレット端末を置いて、みんなが使える「仮設住宅用のネットカフェを作ろう」というプロジェクトが立ち上がりました。

もう一つ。Photrack.jp。今回の震災では、地震の後に津波が押し寄せ、更に火災が起きて、何もなくなってしまった地域があります。この写真の風景は、以前は町だったところです。



こうした地域で亡くなった方の中には遺品が全てなくなってしまったという方もおられます。そういった方のご遺族にとって、発見された一枚の写真の持つ意味は非常に大きな物です。まごころネットのボランティア活動の一つとして行われているのが、瓦礫の中から発見された写真の泥を落として洗浄し、修復して持ち主に届けるという物。


私が行った時には既に塩水に4ヶ月も浸かっているのでインクが溶け始めていたのですが、既に6ヶ月もたっています。とても急務です。また、ボランティアの方はずっと同じ方がいらっしゃるわけではないので、番号のつけ間違いなども起きます。よって、こうした写真修復作業の工程管理を行う為のシステムを作ってほしい。そんな要望から生まれたプロジェクトでした。実際に作業を行っている現場を見学させて頂き、お話を伺いながらプロジェクトは進められました。



こうした写真修復の取り組みはたくさんの場所で行われており、Hack For Japan の中でももう一つ「フォトサルベージの輪」というプロジェクトがあります。まごころネットの写真修復はボランティアの手によるものですが、こちらはプロの方々がボランティアで行う写真修復プロジェクトになっています。



もう一つ、遠野まごころネットのホームページリニューアル。ボランティアの方は多くが入れ替わるので、わからなくなったディレクトリー、わからなくなった ID/PWなどができてしまったりします。Hack For Japan を機に、リニューアルを行い、使いづらい部分を直したり、新しい取り組みを盛り込んだりしました。当日全てが終わったわけではなかったのですが、hackathon 終了後も作業は続けられ、こんな形で無事リニューアルが行われました!



最後に一言。

復興までは、まだまだ時間がかかります。

国だとか会社だとか、同じようなことをやっているNPO同士だとか、そういう垣根を乗り越えて、みんなでこの困難を乗り越えましょう。復旧から、復興へ。前よりも、もっと日本にするために。そして、被災地の役に立つ物を作るため、皆さんのスキルをぜひ活かしてください。

被災地に行って「ITで何か役に立てることはありますか?」と聞いても、たいていあまり答えは返ってきません。なぜなら、何ができるかわからないからです。でも、困っていることはたくさんあるので「困っていることはなんですか?」と聞いてみると、相手がITで解決できると思っていなくても、解決できることもあります。

例えば、被災地の写真を色々撮っていて情報発信したいけれど、取り込んでアップするのがとても大変。そんな方に、Eye-fi カードの紹介をしたら、「そんな魔法のような物があるのですか!?」と。

また、津波にやられてしまった家のある役場の方が、津波にやられた家が原発20km以内なので立ち入りができないため罹災証明を出せずにいたのですが、Google Earthで撮影して印刷をさせて頂いたという例もあります。

IT でできることは、まだまだたくさんある。ぜひこれからも継続して支援して行けたらと思います。

スライドの最後は、おなじみの Hack For Japan Tシャツでしめさせて頂きました。Hack For Japan はまだまだ続きます。興味を持った方は、エンジニアもエンジニア以外の方も、被災地の方も被災地以外の方も、ぜひ一緒にやりましょう。ウェブサイト Hack4.jp までアクセスしてみてください。よろしくお願いします。




なお、本講演にお誘い頂いた @nobuyori さん、ありがとうございました!また、Tweetしてくださった皆様、ありがとうございました。トゥギャっておきました♪



事前記事「企業の枠超えITで復興を支援 」「IT技術者による復興支援に触れる

ちなみにこれは講演では話さなかったのですが、震災が起きてから第一回の Hackathonまでは殆ど時間がなかったのでスタッフ同士顔を合わせたこともなく、第一回ミーティングは 4 月 3 日に開催したのでした。記念すべき写真を @takoratta さんのところで発見したので載せときます :)

Hack For Japan 1st Staff Meeting


Disclaimerこのブログは山崎富美の個人的なものです。ここで述べられていることは私の個人的な意見に基づくものであり、私の雇用者には一切の関係はありません。