2011年5月17日火曜日

日本のIT教育を考える

TEDx Silicon Valleyで考えたことその 2 ということで TEDxSV の脱線メモをもう一つ。繰り返しますけど脱線メモなのでこれはカンファレンスの本筋じゃないです。本筋はセンサーについて、情報について、数字について、データについてじっくりとっぷり語るという物ですが、それについてはまた後で。

Mitch Kapor の講演はIT教育についてでした。

TEDx Silicon Valley

オバマ大統領は、アメリカの未来のリーダーシップにとって教育、特に科学/技術/エンジニアリングと数学は必須であると語りました。

TEDx Silicon Valley

Mitch Kapor は自分が幸いにして若い頃高い教育とコンピュータへのアクセスを早期に得る幸運に恵まれ、この2つは成功へのゲートウェイだったと語ります。ご存知の通り彼は Lotus を創業したり Firefox で有名な Mozilla や Second Life で有名な Linden Lab の会長を勤めたり Wikimedia Foundation のアドバイザリーボードを勤めたりとイノベーションと共にある方です。

これが 1966年のMitch少年。

TEDx Silicon Valley

こうした「機会」が与えられることは極めて重要です。Mitch は自身の生い立ちの話と数々の客観的データを織り交ぜながら、アメリカの教育の現状について語りました。例えばラティーノやアフリカンアメリカンといった「マイノリティ」と呼ばれる子供達の学力が白人やアジア系と比べて低いというデータがあるのですが、カリフォルニアの人口比率を見ると、実はこのマイノリティと呼ばれるカテゴリーに人口の70%が該当します。マイノリティがマジョリティなわけで、彼らの学力が低いということは危機的状況なわけです。

TEDx Silicon Valley

そこで Mitch が現在 Stanford で行っているプログラムが Summer Math and Science Honors Academy 通称 SMASH プロジェクト。

今 SMASH プロジェクトに参加している子供の写真。

TEDx Silicon Valley

人種も肌の色も性別も色々な物が Mitch と違うけれど、未来の Mitch はこういう子供達から産まれるのではないか。また、こういう子供達をもっと増やして行きたい。と Mitch は語ります。

TEDx Silicon Valley

この講演を見ていて、日本の IT 教育について考えさせられました。我々は適切なテクノロジー教育を子供達に与えているでしょうか。教師の IT リテラシーの限界が教育の限界であっては、日本の才能ある子供達がその才能を発揮することはできない。


実は先週、チェコの人たちと話をしていて非常に興味深かったのですが、チェコには非常に優秀なエンジニアが多いそうです。これはなぜかというと、共産主義時代に哲学など人文系の教育をかなり減らして、数学やコンピュータサイエンスなどの教育を増やしたかららしい。ところがあまりチェコのすごい有名なサービスって聞かない。これはなぜかというと、技術はすごいのにマーケティングとかビジネス開発とかが得意な人が不足しているので、なかなかサービスとして有名にならない。

この話を TEDxSV の時にたまたまランチをご一緒することになったロシア人の方としたところ、ロシアも正にその通りで、共産主義時代の教育の影響で優秀な技術者はたくさん輩出しているものの、ビジネスとしては難しい。ただし、大手企業のCTOにロシア人がどんどん登用されているそうです。

もちろん両国とも今は教育のあり方を変えていると思いますが、教育によってこんなに変わるんだなと実感しました。


で、今度は逆の話。先週 Google I/O というカンファレンスを行いまして、その基調講演の中で Angry Birds というゲームの Chrome Web Store 版をリリースしました。それを見てくださった @Nobi さんがこんなツイートをされていました。

#io2011j Angry Birdが時代のヒーロー、ということは、(プログラムの)コードじゃなくって、それ(IT面)以外の工夫(見せ方、キャラクターマーケティング)で頑張っても世界が取れる、という希望。要はバランス感覚。
Angry Birds はかわいいキャラクターやコンテンツ、中毒性を生み出すゲームやステージ設計などが勝利の要因だと言えましょう。私の友人も毎日 Angry Birds をやっている中毒な人達がいますし、Angry Birds のぬいぐるみを集めたりコスプレをしたり。こういう「勝ち方」もあるわけです ;) (そういえば昔 PS3 vs wii でテクノロジー<ユーザーエクスペリエンス?なんて話も出ましたね)

LeWeb2010

日本の教育はどの方向性を目指すのか。IT教育や最新テクノロジーに早いうちから触れさせる。でも、ツールを与えるだけではいけない。教科書通りの考え方ではなく、柔軟に新しいことに取り組めるように発想力を鍛えること。テストで高い点数を取ることだけでなく、技術についてだけではなく、世の中のしくみについて教えること。たくさんたくさん、自分で考えさせること。

私はアメリカの公立の小学校に一年半だけ通ったことがあります。その時に受けた授業の一つでは、生徒が一人一人、世界の中の国を選んでその国について調べてきて発表するというのがありました。教科書で「読んで教わる」とすぐに忘れてしまうけど、クラスメートの各自がじっくり調べて来て語る。地図上ではどこなのか、どんな産業が盛んなのか、どんな通貨なのか、どんな裕福度なのか、どんな宗教なのかなどじっくり話します。みんなも興味を持って聞きます。世界の色々な国への興味がわいてくるし、色々なことを考えます。質問します。答えられないことを聞かれると、ますます調べます ;)

もう一つ、アメリカの小学校時代の授業の中であったのが、ちょうど大統領選挙の時だったので、模擬選挙をやりました。小学生なので政治について詳しいわけではありませんでしたが、投票する為にはそれぞれの候補者について調べて学ばないと投票をすることができません。私の記憶が正しければ、先生はあまり候補者についての情報を与えてくれませんでした。当時はインターネットもなかった。各自が自分で調べて、考えて、投票を行わなければいけませんでした。もちろん教科書には「今行われている選挙」についての情報なんて載っていないので、一人一人が調べて、共有して、議論しながら投票しなければいけない。日本の小学校で総理大臣や議員の模擬選挙なんかはやられているのだろうか。政治というのは、国の方向性を決めてこの国をよくするために行われるべき物だと思います。そうなっていないなら、政治家を取り替えなければいけない。現在世界中で民衆が立ち上がって政治を直そうとしているのは、そういうことだと思います。チュニジアについてはここに書きましたけれども、色々な国で自国を「直そう」と民衆革命が起こっています。現在はブログや Twitter や Ustream や YouTube 等を使って政治家が何を考えているのか/国の行く末をきちんと考えている人なのかを国民に直接、メディアのフィルターを通さずに伝えることができます。国民も賢く政治家を選択できるようになってきていると思います。

日本の政治家は二世が多い。理由の一つは地元の支援者が親から引き継げる。資産も引き継げる。生まれは不公平かもしれないけれど、現実的にそういうメリットがあって、政治家の子供が政治家になるということが多いのだと思います。ただ、恐らく教育もあると思うのです。親から毎日政治家としての心構えや国をよくするために政治家が何をできるのかを誇らしく語られていたら、その子供が政治家を目指してもおかしくはない。逆に、「政治は聖域/政治家は雲の上」みたいな教育をしていると、日本の優秀な子供の人生に政治家を目指すというオプションが入らない。これは国にとってあまりよいことではない。今の日本の政治家は小学校とか訪問して話をしたりしているのかな。現役の政治家が忙しくて無理ならば引退した政治家でもいい。政治家/ex-政治家が、我が子に教えるかのごとく、子供達に語りにいくというのはどうだろう。もちろん子供にもわかりやすく、面白く ;)

TEDxSV の講演者には Code For America を始めた Jennifer Pahlka もいました。いわく、「好むと好まざると我々は全員この国に税金を払っている」わけです。だったら自分が払ったお金を使っている政府をもっとよくしよう、と。

TEDx Silicon Valley

というわけでIT教育の話からだいぶ脱線しましたけれど、教育についてちょこちょこ考えていたことをまとめてみました。

昨日のブログは「どっかの誰かがインターネットという素晴らしい物を作ってくれると期待して口を開けて待つのではなく、自分達の手でインターネットをよい物にしていこうぜ」という主旨のことを書きました。今日のブログは要するに「どっかの誰かが日本を素晴らしい国にしてくれると期待して口を開けて待つのではなく、自分達の手でこの国をよい国にしていこうぜ。そのためには教育は重要だよね」ということですね。はい。

Disclaimerこのブログは山崎富美の個人的なものです。ここで述べられていることは私の個人的な意見に基づくものであり、私の雇用者には一切の関係はありません。