2011年5月4日水曜日

Hack For FukushimaとSafeCastとJoiのMIT Media Lab 所長就任と

先日、福島県の会津若松に行ってきました。会津若松は磐梯山に守られて新潟の大地震でも東日本大震災でも被害が小さく、福島原発からもかなり離れているのですが、「福島県である」ということで修学旅行が敬遠されてしまったりしているそうです。

こんなに見事な桜と立派なお城。見に行かないなんて、もったいない。。。会津はご飯もお酒も美味しいし、親切な方が多いです。ぜひいらしてください。

会津

市内には被災地から町ごと避難されている方々もおられて、物資の配送センターや避難所や避難されてきておられる町役場など色々なところにお邪魔して、ITであれITでない分野であれお手伝いできることがないかお話を伺ってきました。

そして会津大学で会場をお借りして、 Hack For Fukushima というミーティングを行いました。会津はもちろん福島や郡山、東京や京都などたくさんのところから40人ぐらいの皆さんに集まって頂きました。

会津

ミーティングでは、主に「避難所」「経済復興」「原発・風評被害」について議論を交わしました。

●避難所については「物資のマッチングの問題(断る程潤沢な避難所と全く行き渡っていない避難所)」「行政が把握できていないような隣近所で身を寄せ合っているような避難所の問題」「避難所を出た人の支援は?」「現地に行って、一週間なり行動を共にしないとわからないのでは」「ボランティアで来てもらっても、地域と余震の状況によっては彼らの命に関わる可能性もあるのでは」など色々な意見が出ました。

●経済復興については、風評被害による経済への影響(福島ナンバーの中古車が売れなくなっている/漆器にガイガーカウンターでの検査要望がある/馬肉が売れずに腐っていく)などもある中、放射能が関係ないIT分野を伸ばすには国内市場でゼロサムゲームをするのではなく海外に出て行くべき(日本で強い産業を海外へ。今回の災害を教訓に、災害に強いシステムを作って海外に展開しては。エネルギー政策の見直しに絡めて、省エネルギーのデバイスを作っては)イノベーションが生まれる環境を作るにはどうしたらよいかなどについて議論が交わされました。

●原発/風評被害について。このグループには原発周辺40kmに住んでおられる方も複数いらっしゃっており、「うちの娘は嫁に行けないかもしれない」など、不安な声をあげておられました。

現地の方が最も多く仰っていたのは、「正しい情報が欲しい」「本当の数値を自分の目で見たい」ということ。存在しているはずのデータが出てこなかったり、信頼できなかったり、世界との測定方法が違ったり、単位が異なってわかりにくかったり (ベクレル・シーベルト・per hour/per year)。

また、「色々な団体による測定数値が見たい」「リアルタイムで見たい」「空間線量ではなく自分の被曝量を知りたい」「第三者による客観的なデータがほしい(理想はIAEA)」それが難しいなら「IAEAやWHOなど他国籍の第三者機関による監査をしてほしい」といった要望が寄せられました。

そして、「わかりやすくて見やすくて知識の底上げになるようなサイトがほしい」とのことで、コンテンツとしては下記が挙げられていました。
•複数の測定方法による情報がまとめられていること
•放射線に対する知識は、今だけでなく、何年も後に起こりうることへの対策となる情報も掲載
•学者さんのレポートやustream録画の動画などのまとめ
•一般の人に見やすいUIで、テレビや新聞以外の情報媒体が必要。
•情報の使い方、ガイガーカウンターの扱い方のレクチャーやマニュアル
•政府以外の測定から得られた情報をまとめてほしい
•避難所にタブレットなどのスマートフォン端末を配布し、デジタルサイネージのように立ち上げっぱなしで放射能データを流すのはどうか

また、ガイガーカウンターが欲しいとの声も多数聞かれました。現在、福島県によって1,600個のガイガーカウンターが県内の小中学校に配られつつあるそうです。そして、草の根運動としてもガイガーカウンターを現地に送ろうという活動があります。その一つがSafeCast。

Hack For Fukushimaの一週間前に東京で行われた The New Context Conference にも私は参加していたのですが、ここで Joi が力を入れていた RDTN というプロジェクトがありまして、現在 SafeCast に名称を変えています。

このサイトでは、様々なソースから放射線データを集めてきて、マップ上に表示しています。また、ガイガーカウンターをつけて、放射線データを計りながら動いているトラックも派遣しているし、ガイガーカウンターが調達できたら福島に送りたいとも考えているとのこと。



会場には手作りガイガーカウンターを持ってきたり、手作りガイガーカウンターをiPhoneと接続してデータをネット上に飛ばしたりという色々なハックが披露されたり。

NCC2011s

でも、放射線データってそう簡単に扱える物なのか疑問がわきますよね。だからこそ「手が動くハッカー」に加えて、 「原子力のプロ」も連れてきちゃうところがさすが Joi。講演者の一人Dan Sytheさんは Iospectra - International Medcomの創業者兼CEOだそうなのですが、なんと1978年から放射線検知の装置の製造を行っており、 スリーマイル島やチェルノブイリなど、原子力の影響を受けた個人やコミュニティに対しコンサルティングや装置の提供を行ってきた方。100万円もする放射線測定装置をひっさげて来日してくださいました。

ホワイトボードに書き書きしながら、放射線について解説。



それを更に Joi が解説。



ポイントはたくさんあるのだけれど、重要なのは放射線の種類で、何について話しているのかを気をつけること。特に、α(アルファ)とβ(ベータ)だけではなくてγ(ガンマ)波も測ること。α/β波は壁とか皮膚を通さないので、電力会社が社員を原発の施設の中に派遣する時の目安にはなるけれど、周辺の住民の方が気をつけるべきは壁を突き抜けるγ線の測定値。ところが日本で流通している殆どのガイガーカウンターはα波とβ波しか測定できないのだ、とのこと。

測定は風向きによっても雨によっても変わるので、細かく測らないとだめで、町で一カ所測るとかでは全然だめ。同じ畑の中でも測定値が異なることがありうるぐらい。また、同じ場所でも時間によって異なるはずなので、細かく測る必要がある、とのことでした。

また、放射線を浴びるのと放射線を体に取り込むのは違うことなので、それも気をつけるように、とのこと。

さて、実際に計ってみようということで屋上に出て測定。

Geiger Counter

Ray Ozzieさんも一緒に測定しました。

geiger

空気と地面、手すり等に残った塵、土壌など色々なところで計りました。Danさん曰く地面はそもそも高目だし、地面や岩の種類によって高く出ることがあるので「何を計っているのか」は慎重に見極めなければいけない、とのことでした。

放射線の測定に限らず、今の時代は政府や大企業が何とかしてくれる、と考えるのではなく、出来る人が出来ることをどんどんやっていかなければ世の中がよくならない。だからこそフットワーク軽くどんどん手を動かせる個人の力がとても大事で、でもそこにはどんどん先人の知恵とかプロの力とかを加えて補強する必要があって、アマチュア革命が単に既存のスキームを壊すのではなく、より骨太に新しい潮流を生み出せるかはそこからかなあと思っています。先人の知恵へのリスペクト。そして若者の行動力や柔軟な発想へのリスペクト。

なんてことを考えていたら、Joi が MIT Media Lab の所長に就任。超わくわくしますね :) Congratulations Joi, これからが楽しみです!

Disclaimerこのブログは山崎富美の個人的なものです。ここで述べられていることは私の個人的な意見に基づくものであり、私の雇用者には一切の関係はありません。