2010年4月17日土曜日

RiP: A remix manifesto

昨晩、NHK-BShiで「リミックス戦争!? ~著作権保護は誰のため?~」という番組が放映されました。

番組ホームページから引用:

知的な創作活動が、時に莫大な富を生む現代社会。著作権保護をめぐって、いま世界各動画を追加地でし烈な争いが展開している。著作権の保護とは一体誰のためにあるのか? あるカナダ人映画監督が、末端ユーザーの目線で体当たり取材した問題提起ドキュメンタリー。

この番組の元になっている「RiP: A remix manifesto」というドキュメンタリーは、オンラインで全て視聴することができるようになっています。下記にもembedしておきました。また、ripremix.com(寄付制・金額自由)やitunesでダウンロードすることもできます。学校の先生用にAdam Hodginsが解説した「An Educational Guide」もあります。なお、NHKの番組ではこのドキュメンタリーを紹介しつつ、弁護士の福井健策先生が解説を入れる形で進行しています。




チャプター毎に見るならこちらから:

著作権はもともとクリエイターの権利を守るための物だったはずなのに、今はコンテンツを保有する企業がお金を儲ける為の物になってしまった。逆にクリエイターがリミックスのような形で新しい形の作品を作ろうと思うと、著作権はその妨げにしかならなくなってしまっている。自由に使ってリミックスしようとすると、違法となってしまう。合法的に使おうとすると、莫大な金額を支払わなければならなくなる。

よくよく考えてみると、昔のクリエイター達は実は過去のコンテンツを元にクリエイティビティを重ねながら作品を作ってきた。例えばウォルト・ディズニーは不思議の国のアリスや白雪姫等を下敷きにアニメを製作し、ミッキーマウスのスチームボートウィリーはSteamboat Billのパロディだった。でも、これからのアーチスト達はそれが許されない。著作権侵害に対する監視の目は強化されるばかり。ミッキーマウスの絵が保育園の壁に描かれていたら、それすらも問題にされてしまった。著作権が及ぶのはクリエイターの死後14年だったのが死後75年に、企業であれば95年に延長され、今は「ハッピーバースデー」ですらパブリックドメインではなく、歌ったらお金を払わなければいけないという事態になってしまった。

そうはいってもアメリカにはフェアユースがあるので、ある程度の物は「フェアユースの範囲内」ということになるが、日本にはそのフェアユースすらない。

私にとって、一つの解はCreative Commons。CCのサイトのトップページには「Share, Remix, Reuse-legally」つまり「合法的に(コンテンツを)共有し、リミックスし、再利用しよう」と書いてあります。


アーチスト達がCCライセンスを採用し、自分のコンテンツを共有すると同時に、他の人が共有した物とリミックスし、再利用を重ねていくことで豊かなコンテンツの広がりを目指す。


ただし、日本には日本独自の質の高いリミックスカルチャーがあります。それが第二の解。

Remix Manifestoの中で、「面白い音楽はここでおしまい。フェアユースの範囲外になっちゃうから、後はpublic domainの曲を聞いてて」といいながら古くさい音楽をかけるというシーンがあるのですが、実は日本はここがちょっと違うのです。面白くてクリエイティブで、しかも質が高くて最新でリミックスできて、しかも「違法だぞ使うんじゃない!」って怒られない音楽(やキャラクターやイラストなど)という不思議なジャンルが日本には存在する。

日本の音楽シーン全般についての話はもうちょっと下の方に以前書いた英語ブログを紹介していますが、いずれにせよ国民的メガヒットソングやみんなが「ノれる曲」というのはほとんど生まれなくなっている。で、局所的に起こっていることではあるけれども、「合法的に(コンテンツを)共有し、リミックスし、再利用しよう」ということが文化として作り上げられている。それはCCみたいなライセンスでどうだからということではなく、完全に文化・コミュニティとして作られている「場」。その牽引役になっているのが、クリプトン・フューチャー・メディア社の初音ミクを中心としたVOCALOIDシリーズ、そしてドワンゴ社(正確には運営はニワンゴ社ということになっている)のニコニコ動画。そこではアーチスト達は音楽を作るとMP3を公開し、どんどんリミックスしてもらい、よいのが出てくると製作者自らが「ありがとう!」とお礼を言い、「こんなの作ってくれた人がいるよ、見てみて!」と紹介し、更にみんなが音楽なら絵を、絵なら動画を、動画なら3Dアニメを、アニメなら3頭身パロディを。。。などなどと作り足していってどんどん祭りが広がっていく。それをみんなが楽しんでいる。(その背景になっていると私が思っている同人をはじめとする日本のリミックスカルチャーについて書いたブログ「REMIX CULTURE」)

下記は濱崎雅弘さん, 武田英明さん, 西村拓一さんによる論文:
Case Study of Hatsune Miku videos on Nico Nico Dougaに掲載されているネットワーク図。「みっくみくにしてあげる」という初音ミクの曲がどのようにリミックスされ、それが更にリミックスされまくっていったかということを表しています。二次創作とか三次創作とかいう次元をはるかに超えており、濱野智史さんはこれを「N次創作」と呼んでおられます


で、こうやって盛り上がっていった曲がオリコンデイリーランキングで中島美嘉さん等の有名ミュージシャンを抑えて二位を取ったり、こうして盛り上がっていったアーチストがメジャーデビューすることが決まったり、カラオケでニコニコ発の歌がランキングに入ったりしている。下記はジョイサウンド2010年3月のポップス総合ランキングですが、1位残酷な天使(アニメソング)、3位magnet(ニコニコ発)、4位ワールドイズマイン(ニコニコ発)、5位メルト(ニコニコ発)、8位裏表ラバーズ(ニコニコ発)、9位ロミオとシンデレラ(ニコニコ発)、12位just be friends(ニコニコ発) 、15位ブラックロックシューター(ニコニコ発)、20位ダブルラリアット(ニコニコ発)とニコニコ関連だらけになっている。( @iyokan_nicoさんのツイートより)こうしてカラオケで歌われることによって、元の曲を作ったアーチストは収入が入る仕組みになっている。(このへんはやはりドワンゴがニコニコをやってくれててよかったなあと思うゆえんである。ちなみに2008年2月にカラオケに行ったときも、既にニコニコ発の歌がランキングに入り始めていたことを思い出した


2010/5/28追記:
こちらは2010年5月28日現在のカラオケJOYSOUNDのウィークリーランキング

10以内を見てみると:
1・3位         アニメソング
2・4・6・7・8・10位  Vocaloid等の同人音楽
5・9位         商業楽曲

20位内:
14・16・17・19位   アニメソング
11・15・18位     Vocaloid等の同人音楽
12・13・20位     商業楽曲



実はニコニコ動画は、始まったばかりのときは動画の全てはYouTubeからひっぱってきていたもの。独自に動画をアップできるサーバーSmile Videoができてからも、しばらくはアニメのコンテンツなど著作権侵害コンテンツだらけで、かなりコンテンツホルダーからにらまれていた。後にJASRACと包括契約を結んで、歌ってみた・演奏してみた系の人達は合法に。。。なお、ニコニコはAvexや吉本興業等の大手コンテンツホルダーからオフィシャルコンテンツをもらったりもしていたけれど、あまり盛り上がることはなく、結局盛り上がったのはユーザー達が作ったりどこかから見つけてきたりした「ネタ」だったように思う。それをみんなでわっしょいわっしょいこねくり回す(@koizukaさんいうところの)「祭り」が起き、盛り上がっていった物に出口ができるようになっていったというところかなと。

なんかざっくりだけれど、こういうことをNHKはもっと調べて報道して、英語で海外向けに発信してもよいのではないかなーと思うのでした。これらが質の低い物しか生み出していないのであれば取り立てて報道する必要もないのですが、時々びっくりするほどクオリティの高い物が生まれており、それだけを時々海外のあんまりわかってない新聞社とかが突然取り上げて、わかってない解説とかされているのもどうかなあと思うわけです。


上記でちょっと触れた「日本の今の音楽シーンについて去年書いたブログ」は下記です。
What's Happening in Japan Right Now? "Music" in Japan

かいつまんで説明すると、オリコンシングル売り上げランキングによると、2009年のトップ10のうち4つが嵐で、KAT-TUNや関ジャニ∞などのジャニーズ(アイドル)、遊助(お笑いタレント)ばかりがランクイン。いわゆるミュージシャンはランキングから姿を消しています。

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こちらがオリコンのアルバムランキング。シングルよりはミュージシャンが多いものの、トップ10のうち半分は「ベスト版」なんですね。

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第一興商のカラオケランキングによると、トップ10全てが2008年以前の曲.

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CDの売り上げ枚数を見ても、もっとも売れたシングルCDですら、656,676枚しか売れてない。下記は歴代のシングル売り上げベスト50ですが、ほとんどが2000年以前の曲で、例外は2003年のSMAPによる"世界で一つだけの花"のみ。後は全て2000年以前のリリース。ちなみに2000年にはTsunamiや桜坂、EverythingやWait & See~リスク~など、記憶に残っている曲も入っていました。

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音楽の趣味趣向が多様化され、メガヒットが生まれにくくなったとはいえ、結構終わってる感があります。

もう一つ、テレビで新曲をあまりやらなくなっている気がします。ミュージックステーションは相変わらずやってますが、ベストテンとかトップテンのようなランキング番組は消え、夜のヒットステーションみたいなのも全部消えている。Hey Hey Hey Music Champなんかは以前は新しいアーチストや売れているアーチストを呼んでいた気がするのですが、最近はレトロなランキングでレトロなミュージシャンを呼び、スタジオには芸人系の人達を呼んで昔話を語って終わってる。新人がテレビに出る機会もないので認知もされず、ますます視聴率が取れなくなるので古い曲や昔のミュージシャンに制作側も頼りっきりになっていく。

それとは全く別次元で、若者達の音楽への接触は進んでいく。彼らはテレビをあまり見ないし、カラオケにもあまりいかないので上記の結果には現れない。パッケージはあまり買わないので、上記のランキングにも出てこない。(アイドル好きだけは例外なので、嵐とかジャニーズのパッケージは売れている)彼らの視聴傾向が見えるのは、デジタルダウンロードのランキングやファイル共有のランキング。


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GReeeeN, JUJUや西野カナとかが上位に。これはPC中心(つまりもう少し上の年代)のHMVのオンラインセールスランキングと明らかに異なる傾向。

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あと、もう一つ、有線リクエストランキングはこちら:

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CDの売り上げ減少は日本だけではなくアメリカでも著しい。(青が日本でアメリカが赤)

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Data source (日本の生産数量 日本の生産 金額 アメリカの出荷数量 アメリカの出荷金額 タケルンバ卿日記より)

じゃあどうするかということで色々あるわけですが:

1) 動画共有サイトの活用

ニコニコ動画やYouTube等によって、音楽を知ってもらい、ファンを増やす。例えば、平沢進さんASCIIによるインタビューによると彼はDVDにコピー防止をかけていない。なぜなら今の世の中コピープロテクションをかけてもどうせコピーされてしまうから。彼はファン達にニコニコ等で自分の音楽を使ってリミックスしたり再利用して「遊ぶ」ことを許容し、その代わりファンを更に増やしていき、儲かる仕組みを作っている数少ない「ある程度無名」なアーチスト(ごめんなさい、もちろん平沢さんは局所的には有名ですが、浜崎あゆみとかSMAPとかみたいな有名さじゃないって意味で)。よくこの類の話をするときにRadioHeadとかNineInchNailsのような超有名アーティストを使って成功例に出すのだけれど、もちろん有名アーチストの例も必要ながら、そこまでの売れっ子ではないがきちんとモデルが成立している例を挙げていくことも重要だと思うので、平沢さんのような例はもっとクローズアップされてもよいような。

また、初音ミクを初めとするVocaloid系の音楽でもMP3を無料で公開し、音楽やビデオ、イラスト等を自由に作らせるというモデルが盛んに行われている。これらの曲はJASRACに登録しなかったりするので、ファン達はどんどんリミックスして盛り上がることができる。元の音楽が無料でダウンロードできてもファンはやはりCD等が出るなどして、アーチストに敬意とお礼を表す方法が出ればお金は払うものだ。SuperCell等、ニコニコ発アーティストのCDがちゃんとオリコンランキングに入っていることもそれを証明しているかと。

2) モバイルサイトとのコラボ

このブログ記事にも書いたとおり、若者は携帯小説が大好き。実は西野カナさんのが売れ始めたのは、長距離恋愛をテーマにした携帯小説とのコラボによるものだった。

3) アニメ

2010年4月27日のオリコンデイリーランキングがこちら。

1位と2位がアニメ「けいおん!」のオープニングとエンディング
(3位が℃-uteというハロプロのアイドル)
4位がアニメ「B型H系」のオープニング
5位がアニメ「鋼の錬金術師」のエンディング
。。。はい、アニメだらけです。



ところで日本のアニメソングは海外でもものすごい愛されてます。去年チリに行ったときに会ったチリ人大学生はアニメのテーマソングをきっかけにラルクのファンになり、買えるCDやグッズその他は全て買い、日本語を勉強し、J-POPにのめりこんでいったという。Dir en GreyがSan Tiagoでコンサートをやるそうで、そのチケットの売れ行きもやはりアニメソングを歌っていたことがきっかけだったのではないかといいます。昔はアニメを輸出するときにオープニング・エンディングをご当地ソングに変えていたそうなのですが、最近はアニメが日本オリジナルのままYouTube等にアップされているので、OP/ED曲がそのまま露出され、愛されるようになったのではないかと推察します。

。。。みたいなことをつらつらと英語で書いていたのですが、長くなるのでこの辺で。

ちなみにここでは書きませんでしたが番組でも紹介されていたブラジルの文化政策は色々面白いので、どこかで機会があれば書こうと思います :)

実は過労死しそうに忙しかった時にRIPを(ボランティアで)日本語訳しておいてほしいと頼まれたことがあり(^^;;NHKの番組で日本に紹介されてよかったなあと思っております。。。



2011/2/7追記:
2010年オリコン年間シングルランキングのベスト10が嵐とAKB48で埋め尽くされている件。。。。