2010年4月28日水曜日

創造するアーキテクチャ3で話さなかったこと

昨日、創造するアーキテクチャ3にゲスト参加させて頂きました。濱野智史さん、江渡浩一郎さん、中西泰人さん、木原民雄さんという実に濃いメンバーに加え、前田邦宏さん、森山朋絵さん、安藤幸央さんというゲストの方たちに混じり、色々ディスカッションができて楽しかったです。ありがとうございました!

IMG_2010

実はトピックが「ID」(ただしそれにはとらわれずもう少し大きな意味での社会性の面を議論)とのことだったので、IDについてつらつらと考えながら向かったのですが、そのとき考えていたことを結局話さなかったのでブログに書いておこうと思います。

話されたことについては動画がYouTubeにアップされました!10本に別れているそうなので、下記からどうぞ♪

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●実名・匿名・顕名・ペンネーム

私は実名でいける人、顔出しでいける人はそれでいけばいいと思っています。「LinkedInがあれば履歴書・名刺はいらない」「ネットがあれば履歴書・名刺はいらない」など色々言われていますが、最近は正にそういう感じ。

仕事相手だったら実名が何であるかよりもその人のスキルや過去の実績、過去の仕事の評判がどうか知りたいのであって、実名が知りたいのではない。ピアニストに仕事を頼みたいならその人の演奏の腕が問題なのであって、例えばニコニコで有名な「事務員Gさん」のピアノの腕はよくわかっているのでピアニストに依頼したい仕事があれば私は彼に仕事を頼むだろうし、そのときに彼の実名が何であるかなど、あまり関係がない。アーチストは特に、芸名やペンネームで活動し、デビューして、それで生きていけばいい。もちろん実名でやりたい人は実名を出せばいいけど、それが必須ではないことは芸能界を見渡せばわかる。そういえば昔@cojiさんがニコ生でライブプログラミングをしてもらって、それを見てエンジニアを採用できないかとtweetしていたように記憶しているけど、プログラマーもそうやって腕を生で見せる方法があれば実名はどうでもいいのかもしれない。友達はその人が信頼に足りうる人物かどうかが重要なので、それがわかれば実名がなくてもいいのかもしれない。皆さんは私が山崎富美だと思っているけれど、私の本名が実は崎山美富だったとしても、私への評価は変わらないだろうし、友達をやめる人が出るとも思えない。ただ、コロコロ名前を変えずに「個人を特定」できることは重要なのではないかと思います。

実名、経歴をばっちり書いていたアニリール・セルカンさんが実は経歴詐称だったという事件もありましたしね。

先日海外の人からTwitter経由で雑誌の取材依頼が入りまして、あまりにフォロワー数が少ない人なのでその人が本当にちゃんとした雑誌の記者なのかを調べるためにGoogleで検索しまくったりしました。その人の名刺も履歴書ももらってないけど、ネットでかなり調べられる。「国民IDで政府が全ての情報をもって国民を監視するからどうの」というよりも既にネット民同士がお互い検索しまくってその人の情報を拾いまくっているわけで、ネット上の相互監視社会には既に突入している。そして、それをうまく使って、セルフブランディングすると、「ネットがあれば履歴書・名刺はいらない」世界になる。だからうまく使いましょうね、と。。。

問題は、2ちゃんねるのように匿名で他人の悪口を書いて問題を起こしちゃうこと。この辺は韓国だともっと先を行っていて、悪口を書かれまくって女優さんが相次いで自殺したりして、それらのポータルでは実名が必須になり、住民登録IDと連動したり、サイバー侮辱罪が論議されたりしている。

●イランの話と匿名性の重要性の話

私は以前イランについてたくさんブログを書いていたのですが、イランで大統領に反対してTweetしている方たちは個人を特定されてしまうと逮捕されたり拷問されたり殺されたりしてしまう可能性があるので、匿名でやっておられる方が多いです。ていうか、匿名じゃないとやばいんです。私も取り上げるときにぼかしを入れるとかしていたのですが、その当時にいくつか忠告を受けました。

1)日本だからと安心して書いてると、危ないよ。

イスラム系文化に反対しているとみなされると、日本国内にいても殺されることがあります。というか、Googleで検索すればそういう事件が結構出てくる。しかも私は実名顔出しでブログを書いているので、命を狙われたら彼らにとっては殺すのは簡単なターゲットであるらしい。

2)日本で取り上げられること自体、目をつけられる要因になる。

彼らがTwitterで嵐のように書きまくっている間は、one of the manyで済むらしいのですが、私がブログなり記事なりで取り上げることで、「海外でも取り上げられているこのツイッタラーは誰だ」ということで目をつけられる可能性があるらしい。というわけで、Twitterやブログは「公開されている情報」ではあるし、日本語なんて読めないだろうと思えるのですが、実は日本で取り上げること自体が色々な意味を持ってくると。

というわけで「日本だから」「日本語だから」日本の常識でよいというわけではないのだなあということを実感したのでした。

●上海とネット規制とブロガー逮捕の話

去年上海に行きまして、友達に会いました。中国以外で会っている時は普通に色々な話をしていたのですが、今回はせっかく私が中国に行って会っているので、中国の話を色々聞いていたのですが、普通に中国の言論封殺の話とかバンバンしてくる。YouTube用に動画を撮っていたので一旦カメラを止めて、「この話は政府の人達が聞いたらやばいからカメラを止めるね」と言ったところ、いいのだという。こうやって声を上げていかないと、変わらないから、と。ちなみに名前も顔も出した状態で。なお、その動画を私はどうしてもアップできていない。

彼のTwitterをしばらくフォローしていたのだけれど、普通に「誰々が逮捕された!」というツイートが混じってくる。日本人とアメリカ人ばかりをフォローしているタイムラインでは考えられないタイムラインになる。ちなみにそれは世界中で起きていて、イランのブロガーが大勢逮捕されているのは前にもブログに書いたけれど、例えばGlobal Voices Advocacyのアカウント@advoxをフォローしていると、直近でも19日にエジプト人ブロガーが警察に連行されたり15日にもチュニジア人ブロガーが逮捕されたり、13日にクロアチア人ブロガーが逮捕されたりしている。今は特にチュニジアのネット規制がひどいようです。日本では全然話題になってないけど。

@manal: @ifikra: Tunisian blogs aggregator blocked in Tunisia http://tunisr.com (@Tunisphere) #censure #censorship (via @Selim_ )  元URL

Large wave of #censorship in #Tunisia :blocked websites: #rue89 #nouvelobs #vidoemo #20minutes #blipTV #metacafe #wattv and much more 元URL

RT @MKais updated list of blocked video-sharing websites in Tunisia http://post.ly/cVjF (3 were blocked in April 210 and 2 on the same day) 元URL


ちなみに上記で書いたクロアチアのブロガーは、「eDemocracy Award」の政治とネットを変える10人の一人に選ばれた、Marko Rakarさん。eDemocracy Awardについては下記をご参照。

The 10 Who Are Changing the World of Politics & the Internet in 2009 - winners of the eDemocracy Awards announced

  • The Democracy Center, represented by Jim Shultz, Executive Director (Bolivia)
  • CLIME, Center for Liberty in the Middle East, represented by founder Eleana Gordon (USA)
  • DiploFoundation, represented by founder Jovan Kurbalija (Malta)
  • EUProfiler, represented by project manager Alexander Trechsel (Switzerland)
  • Peter D. Greenberger, Team Manger “Elections and Issue Advocacy”, Google Inc. (USA)
  • The Iranian protesters (Iran)
  • Nazaha, the Arab web portal in the fight against corruption, represented by founder Ibrahim Fahmy (Egypt)
  • Pollitika.com, represented by founder Marko Rakar (Croatia)
  • Joe Rospars and Obama’s New Media Team (USA)
  • Twitter (USA)

  • 匿名でブログを書く方法については色々な人達が書いています。


    ●Gizmodoの話

    Gizmodoの話は皆さんご存知だと思いますが、念のため。Appleの社員がバーで次世代iPhoneを「紛失」。Gizmodoがそれを「拾った」人から5000ドルで買い取って記事にしたというもの。発売前の製品を正規ではないルートで入手し、公開してしまうことの是非について、ネット界では議論が沸騰していました。それはやっちゃいけないだろうと。

    で、昨日カリフォルニア州のコンピュータ犯罪緊急捜査合同チームREACT(Rapid Enforcement Allied Computer Team)がGizmodoの編集長Jason Chen氏の自宅を家宅捜索し、コンピュータ4台とサーバ2台を押収しました。ブログを書いて、お出かけして、自宅に入ろうと思ったら警察が家の中にいたというのはかなりの恐怖体験ではないかと思います。(先日堀江さんもやられていたようですが。。。)今回、警察としては「落し物と言っているけれど実は盗品だったのではないか(Appleは盗まれたと言っている)」そして仮に盗品だったとして、「Gizmodoは盗品と知っていたのか」等を調べていると思われます。

    ただし、そのREACTのsteering committeeにApple社が入っているのではないかという指摘もあります。

    また、カリフォルニアにはジャーナリストの権利を守る法律があるわけですが、ブロガーがジャーナリストであるとすれば、この捜査令状は無効であるということになります。
    Expert: Invalid Warrant Used in Raid on iPhone Reporter’s Home

    というわけでEFFが出したBloggers' RightsBlogger's Legal Guideが急速に注目を集めている昨今なのでした。カリフォルニアにはオンラインジャーナリストをジャーナリストとする判例があるのですが、ブロガーはジャーナリストなのか?

    EFFのJennifer Granickは「カリフォルニア州法では、ブロガーがジャーナリストだということは明確なはず」“California law is crystal clear that bloggers are journalists, too,” と語っていますが、さて。

    ●Bloggers' Rights抜粋:

    Bloggers can be journalists (and journalists can be bloggers).
    Bloggers are entitled to free speech.
    Bloggers have the right to political speech.
    Bloggers have the right to stay anonymous.
    Bloggers have freedom from liability for hosting speech the same way other web hosts do.
      Blogger's Legal Guide - Section 230 Protectionsも参考にどうぞ。

    なお、Cnet記事によるとGizmodoは警察に対して告訴することも検討しているとか。

    あと、この辺の話も出るかなと思ったのでリンクだけ残しておこう :)