2010年3月30日火曜日

UstreamとJRCの契約について

JASRAC管理委託曲は、テレビで使う場合は包括契約があるので、テレビ局は毎回毎回JASRACに許諾を得なくても、合法的にテレビでガンガン音楽をかけられるわけです。

JASRACやJRCYouTubeやニコニコ動画と包括契約をしたので、それぞれのサービスのユーザーはJASRACやJRCの管理下の曲を合法的に自分で歌ったり、演奏したりすることができます。ただし、CD等の音源をかけるのはNG。そういう契約になっているからです。(JRCとは、JASRACのような音楽著作権管理団体で、スピッツとかが登録しています。)

で、Ustreamは日本の音楽著作権管理団体と何の契約もなかったので、今までDJプレイなんかをやっていたものは、個別許諾を取っていなければ違法でした。皆様ご存知のDommuneはJASRACから直接許諾を受けていたそうです。ただし、Ustreamを使う人みんなが、一曲一曲、個別許諾を取りに行くなんてリアリティがないので、音楽著作権管理団体側の動きが注目されていました。

で、今日JRCの荒川さんから衝撃のツイート

Ustreamにおける楽曲利用について、本日、MySpace発で、JRCからの利用許諾にかかる発表をさせていただきました。http://bit.ly/9dXYuS 必ずしもベストな契約ではないかもしれませんが、現状においてはベターなスキームが組めたのではないかと思います。

「USTREAM」での作品利用に関するJRCの取組みについて(超約)

・JRCとUstreamの協議の結果、4月から6月までの実験期間中は、JRC管理楽曲のうち著作権者の許諾を得た楽曲についてユーザーがUstreamで演奏・歌唱などで利用できる

DJプレイやBGMなどでCD音源等を利用する場合には、本来利用者が音源の権利者から個別に利用許諾を得る必要があるが、そもそも権利者は誰で、連絡先はどこかわからない。よって、JRCが権利者に説明、案内を行い、利用許諾を得てきたので、許諾を得た音源については、ユーザーが個別に手続を行うことなく、DJプレイなどで自由に利用できることになった

・OKが出た曲の「ホワイトリスト」は下記からデータベース検索できます。みんな!4月1日から合法的にUstreamでDJプレイできる曲のリストだよ!


このホワイトリストで、「原盤の欄に◯」がついている作品は、そこに記載のあるCD音源であればそのままUstreamで使用できるもの。(テレビと同じですね)「原盤の欄に×」がついている作品は、バンドでのカバー演奏やギターの弾き語りなどができるもの。CD音源をそのまま使うのはNGです。(YouTubeとかと同じですね。)

・で、更にすごいのが今までJASRAC管理曲だったものが、これを機に4月からJRCに管理を移行するものがあるらしい。その中には坂本龍一さんの作品245曲、「energy flow」「THOUSAND KNIVES」「TECHNOPOLIS」などの作品が含まれているそうです。

・マイスペースのプレスリリース



第一弾のホワイトリスト( http://www.japanrights.com/ust/index.html )には、「スピッツ」「ホフディラン」「Sweet Vacation」「ムック」「坂本龍一」「浜田省吾」他、多岐に渡るアーティストの作品にかかる著作権の許諾が示されており、中で「スピッツ」「ホフディラン」「Sweet Vacation」「ムック」らの作品は音源にかかる許諾も示されております。尚、このホワイトリストは随時更新されてゆくことが予定されており、今後もマイスペースはJRCや(社)音楽制作者連盟などの権利団体の協力を得ながら、USTREAMユーザーが安心して音楽を使用できる枠組み作りを共同で推進致します。


なお、JRCのサイトに行くと、ネットでの配信について契約とか利用登録とか色々書いてありますが、今回のスキームでは何もしなくて大丈夫です!荒川さんのツイートより引用:

今回の合意では、「Ustream日本法人が出来るまでの間はMySpaceが権利処理(許諾契約、使用料の支払い)を代行する」「故にUstreamユーザーはホワイトリストに載っている楽曲については何ら特別な契約手続きを経ることなく使用することが出来る」ということになっています。

とのことです!



こうした取り組みは今まではプレスリリースやメディアでの記事、もしくはブログのような形でお知らせが来て、関係者のやりとりはあまり見えないのが通常でしたが今回は:

JRC代表の荒川(@araara)さんのツイート:

今回の合意形成に向けての最初の協議テーブルのセッティングに於いては、音楽制作者連盟の動きが非常に大きな推進力になりました。@yamabug さん、どうもありがとうございました。今後とも宜しくお願いします!  元URL
MySpaceの @ataira さん、@no0ob さん、らをはじめとしたスタッフの皆さんとの意見交換は、私たち権利者にとっても非常に強い刺激の連続でした。 元URL

音制連理事の山口(@yamabug)さんのツイート:

最初に反応したのは音制連ですよ。@araaraさんの業界での信用と@atairaさんの明快なスタンスが決め手でしたね。信頼関係が大切ですね。  元URL
こちらこそです。@atairaさんが使用料を払いたい、違法状態を解消したいという姿勢を明確にしてくださったのが大きかったです。プラットホーム事象者のスタンスが事務所にとっては肝要ですね。 元URL

MySpaceJapanのCEO 大蘿(@ataira)さんのツイート:

音制連の動きがあったからこそ、できました。どうもです。RT @yamabug: こちらこそです。@atairaさんが使用料を払いたい、違法状態を解消したいという姿勢を明確にしてくださったのが大きかったです。プラットホーム事象者のスタンスが事務所にとっては肝要ですね。  元URL
こちらこそ、これからが大事ですから。RT @araara: .@ataira 今日の一歩は小さな歩みかもしれませんが、これをキッカケにしてどんどん前進したいものですね。今後とも熱い意見交換をさせていただきたく、よろしくお願いいたします。  元URL

素晴らしいなあ。で、気になる発言が。

USTREAMの著作権処理についての取り組みの第一弾です。RT @MySpaceJP: マイスペース上のUstream配信の楽曲利用について、JRCから利用許諾を受ける運用スキームを開始 http://bit.ly/9aFm5o #PR ^広報  元URL
JRCさん、JASRACさんともいい形になりそうです RT @yamabug: 出た!権利のクリアランスもこのくらいのテンポ感でやっていかないと時代に遅れますよね。詳細はこれからですが、とりあえず方針が示せて良かったと思います。RT @ataira: .@de_tarosann@ 元URL
これを機に、JASRACも何か来るのかな!?期待!


一連のやり取りを @chocolat_J さんがtogetterにまとめてくださっていました!




権利関係の整理

著作権とは:楽曲の作曲・作詞者がもつ権利。JASRACやJRC、イーライセンス等の音楽著作権管理団体に管理を委託されていることが多く、管理団体はその楽曲が使用されると使用者から料金徴収を行い、著作権者に還元する。

楽曲を作った人は、誰かに使われたら、対価をもらって生活の糧にしたい。だけど一人一人料金徴収をしにいく程暇じゃない。よって、JASRAC等に著作権の管理を委託し、料金を徴収代行してもらい、食べていっているのだ。「歌詞を書いたらJASRACが料金徴収」については程度問題はあるけれど、「歌詞を書かれても料金徴収しない」とJASRACが言ったら、実は著作権管理を委託された事業者としては「仕事してない!」ってことになる。

YouTubeやニコニコ動画等とJASRACの契約で、CD音源を流せないのは、JASRAC等は著作権の管理団体にすぎないため、作詞作曲に関してしか許諾を出せない。よって、「自分で歌うのと演奏はOK。CDを流すのはダメ」ということしか言えないのだ。それはJASRACがカスだからではなく、許諾を出す権利を、彼らがそもそも持っていないから。

今回のスキームが画期的なのは、JRCが本来は「管轄外」である、原盤権に踏み込んだこと。

原盤権とは:演奏者や歌手などの実演家、音楽の編集作業など、レコードやCD等を作るにあたって作詞作曲以外の作業を行ったことに対して与えられる「完成した原盤に関する権利」。実演家が所属する芸能事務所や音楽出版社、実演家と契約を結んだレコード会社等が原盤権を持つことが多いが、実演家が自ら保有する場合もある。

JASRACやJRC等は原盤権についてはある意味無関係なので、本来は使用者が曲毎に「誰が原盤権を持っているのか」を調べて、許諾を得なければならなかった。JRCは、今回それを駆け回ってやってくれて、データベース化してくれたのだ。そこがすごいところ。

では、なぜテレビでは流すことができるのか。

報酬請求権:「放送」や「有線放送」でCDやレコード等が使われた場合、放送事業者や有線放送事業者に対して使用料(報酬)を請求できる権利が第95条で定められているから。

いわゆる放送事業者はこの特権で守られてきたので、じゃんじゃんテレビで流せた。実演家もテレビで使われてみんなの耳に入って、お金も入ってくるのでもちろん異論はない。なお、この権利の行使は、JASRACやJRCではなく、社団法人 日本芸能実演家団体協議会を通じて行われています。

じゃあインターネットは?ってことなんですが、「放送」じゃないので、上記特権が当てはまらない。よって、通常の「公衆送信権」の問題になる。

著作者(曲の作曲・作詞者)が持つ楽曲の「公衆送信権」(23条1項)の問題。これは著作権と同様、JASRAC等が管理を委託されている。(「歌詞をTwitterに書いたらJASRACが料金徴収」して作詞者にお金を払いに行かなければいけない理由はここ。)

更に、実演家が持つレコードに収録されている実演の「送信可能化権」(92条の2)とレコード製作者(レコード会社)が持つレコードの「送信可能化権」(96条の2)の問題。これは原盤権と同様、芸能事務所やレコード会社、実演家自身等バラバラで誰がもっているのかわからないので、JASRACのサイトには「うちは管轄外なんで、自分で許諾を取って」と書いてある。繰り返しになるけど、JRCは、今回それを駆け回ってやってくれて、データベース化してくれたのだ。そこがすごいところ。

みんなが自分のお仕事をしているだけの状態だったら、JRCはJASRAC同様「うちは著作権管理が仕事なんで!」といって原盤権には踏み込まず、CD音源をUstreamで流すのは違法のままだった。MySpaceは本来、わざわざUstreamで流した音楽の料金をJRCに払う必要なんてなかった。だけど、「違法状態を解消してお金を払いたい」気持ちよく音楽を流し、聞き、楽しみたいということで今回踏み込んだ。Ustreamの日本法人ができたとしても、設立当初はばたばたするだろうし、音楽業界の人脈がすごい人ばかりで設立するとも思えないので、当面権利関係を動かすことなんてできなかったでしょう。そこをJRC、MySpace、音制連の識者たちが動いてスキームを作ったというのは本当に素晴らしいことだったと思います!