2010年3月11日木曜日

CGMの現在と未来

2010年3月10日に東京で開催された「CGMの現在と未来: 初音ミク、ニコニコ動画、ピアプロの切り拓いた世界」に参加してきました。

これは情報処理学会創立50周年記念全国大会のプログラムの一つとして開催されたイベントで、ニコニコ動画の生みの親戀塚さん初音ミクの生みの親の伊藤さん、VOCALOIDの生みの親の剣持さん、ボカリスの生みの親の後藤さん、そしてニコニコ動画を語らせたら右に出る者はいないリサーチャーの濱野さんによるパネル。ありえない程豪華メンバーでクラクラする。

私は数ヶ月前からこのパネルを見るのを本当に楽しみにしていて、数日前からwktkで夜も眠れないほどでした。寝たけど(笑)

記事を書くにあたってはオフィシャルtsudaリストな津田さん (@tsuda)のtweet(togetterでのまとめ)と、深水英一郎さん(@getnewsjp )の動画をお借りしています。ありがとうございます!

=========================================================

■開演前

本イベントは、事前に主催者側から下記動画がニコニコ動画に投稿され、これをマッシュアップして「イベントのCM動画を作ってね!」という呼びかけが行われていました。


それに対していくつかの動画が投稿されていたので、開演前にそれらが上映されました。

IMG_0547

CGMの現在と未来をゆっくり歌ってみた(動画)
東大の厳粛なる大教室の、大スクリーンを「ゆっくり」が動いていくシュールな姿。
■司会の後藤真孝(@masatakagoto)さん(産業技術総合研究所)によるオープニング(スライドPDF)

CGMの歴史振り返り。

ニコニコ動画は2006年12月公開、初音ミクは2007年8月発売。2007年12月にピアプロができて、2008年12月に濱野さんの「アーキテクチャの生態系」発売。2010年3月現在、ニコニコ動画は会員数が1600万人に達した。重複アカウントを持っている人が多いとはいえ、単純計算だとこれは日本の人口の12.5%であると説明。(ちなみにプレミアム会員は70万人なので、プレミアム会員費だけでニコニコ動画は月額3.5億円の売り上げがある計算で、これに広告やアフィリエイト等の収入が乗ってくる。あの、ニコニコ動画が。思えば遠くへ来たものです。。。)


■剣持秀紀(@kenmochi)さん(ヤマハ株式会社)講演
「歌声合成の過去・現在・未来」(スライドPDF)


IMG_0549

剣持さんのお話は「歌声合成の将来がどうなるか」と、「それがCGM文化にどう寄与するか」について。

歌声合成の歴史:

古くは1961年のベル研究所に遡る。「物理モデル(フィジカルモデル)」と「スペクトラルモデル(歌声をそのまま扱う)」、そしてその「中間モデル」がある。

2000年の3月頃から開発が始まった「VOCALOID」は物理モデルとスペクトラルモデルのいいとこどり。2004年に最初のバージョンが出て、現在は13個くらいある。提供会社も増えた。初音ミクを使えば音程を外さない・ミク自体が好き・ミクを使えば注目を浴びて聴いてもらえる。。。等の理由によりヒットにつながった。

人の声と歌声合成は、メトロノームと電子メトロノームのような関係。昔はアナログのメトロノームが主流で、電子メトロノームは最初は「視認性が悪い」「聞こえにくい」「味がない」と言われ、あくまでアナログメトロノームの代用品だった。しかし最近は電子メトロノームならではの価値として「正確」「持ち運びやすい」「チューナー機能」等が評価され始め、現在はデジタルが主流に。電子メトロノームがメトロノームの単なる代用ではなくなったように、歌声合成も人間の歌手の単なる代用以上のものにならなければいけない。実際に人の歌声よりもミクの声が好きで聴くという層も出てきている。

歌声合成の未来について:

1)声のバリエーションの拡大

・歌声のバリエーションは、歌声のスタイルや得意ジャンル、言語のバリエーションを増やしたい。例えば、現在スペイン語のVOCALOIDも開発している。

・歌声以外への拡張。歌声と話し声は完全に分かれているわけではなくグラデーションがある。歌声と話し声の中間的なところがまだ手つかずで、そこを狙っていきたい。そこでVOCALOID「flex」という韻律を直接操作可能な合成エンジンについて、先日発表した。(いわゆる「しゃべるVOCALOID」ですね)

2)利用場面の拡大

今は主に音楽制作とニコニコ動画への投稿という使われ方が多いが、ライブやコンサートなどでも使われたい。また、家電やロボットに組み込みたい。CEATECで発表もした。

3)ユーザー層の拡大・歌声合成の普遍化

以前は作る人と聴く人がくっきり分かれていたが、今は変わってきた。「私も作ってみよう」という人が増えている。それが進むと、「みんなで作ろう」という考え方になる。コラボレーションするツールも増えていくのではないか。15年後には歌手がデビューする際、とりあえずVOCALOID用の録音しようか、みたいな話が出たり、「あの歌手は最近では珍しく生だって」みたいな会話がされるようになるのではないか。そういう未来を夢見ている。

■伊藤博之(@itohh)さん(クリプトン・フューチャー・メディア株式会社)講演
「初音ミク as an interface」(スライドDL)


IMG_0550

初音ミクを一昨年発売。おかげさまで厚い支持を受け、CGMの潮流を作り出せた。
(ちなみにニコ生ではここでアンケートを実施→ボカロを持ってる?回答は65%がもっていない)

発売当初は、この商品はDTMユーザー向けのニッチな商品で、普通の人が買うものではないと思っていた。ところが発売してみたらDTMユーザーではない層のユーザーがイラストを描いたりアニメを作ったりコスプレをしたり、爆発的に盛り上がった。

今日のテーマの1つの「インタフェース」とは、2つの物の間に立って情報のやりとりを仲介するもの。言語やコンセンサス、手順や企画、常識やルールも広い意味でのインタフェースと言える。

もう1つのテーマの「著作権」とは、著作物を創作したことにより著作者に自動的に帰属する権利のこと。著作権法の考え方は他人が作った作品を無断で利用してはいけないということ。著作権法ができる前まではすべての著作物は「原則OK」で使うことができた。そこから著作権法ができて、全ての利用を無断利用できないように変更し、保護した。その後、その上で権利者の許諾を得ずとも利用できる部分を制定し、私的複製や引用を認めた。

IMG_0551

●クリプトンのキャラクターを使うことに対するライセンスシステム「ピアプロ・キャラクター・ライセンス

インタフェースは、誰でも使えるもの、原則OKというもの。しかし、著作権法のデフォルトは原則NG。これらは相反する。著作権を原則OKにするには許諾を拡張する必要がある。これを我々はライセンス(契約)と呼ぶ。ライセンスシステムはいろいろある。FSFやGPL、クリエイティブコモンズ、オープンソース、BSDライセンス、ニコニコモンズ、文化庁自由利用マークなど。そして作ったのが「ピアプロ・キャラクター・ライセンス」(PCL)

●キャラクター利用の「ガイドライン

初音ミクは売れたことで、イラストを描く人や3Dモデルを作る人、アニメを作る人やコスプレをする人など、二次創作の共通テーマになってきた。そこに創作の共通テーマとしての「インタフェース」がある。しかしそれらの創作物は自動的に「著作権法」に拘束される。それをまずクリアするために、2007年12月にキャラクター利用の「ガイドライン」を制定した。ガイドラインは二次創作が合法的に表に出られるためのもの二次創作はファンアートであって、製品拡販やビジネスの拡大につながるという認識。ガイドラインに沿う限り、権利侵害となることはない。

●作家間のライツをクリアランスして合法的N次創作を可能にするための「ピアプロ

しかしそれだけでは十分ではないので「ピアプロ」というサービスを開始した。ピアプロはCGM型投稿サイト。音楽、イラスト、テキスト、3Dモデルが投稿できる。初音ミクほかクリプトンのキャラクターの二次創作作品の投稿が可能。投稿された二次創作作品は、ほかの会員が自由に利用可能。

重要なのは、作者へのリスペクト。利用後作者に“ありがとう”が伝えられるしくみを作りたかった。

二次著作物、三次著作物。。。。N次著作物と利用が広がっていくと、著作権法下では全ての作者に許諾を取らないといけないので非常に煩雑になる。

IMG_0552

そこで、ピアプロではまとめて利用許諾をしている。会員はピアプロの利用規約に同意してもらう。使ったら「使いました」と報告をすることで、自由に素材をダウンロードして動画投稿サイトに投稿することができる。「ピアプロ」がクリアランスセンターとして機能するようにした。

IMG_0553

●非営利・無償なら(ブログへの掲載等)自由に使える初音ミクのライセンスは「ピアプロ・コモンズ

初音ミクのライセンスの仕組み。通常の著作権法では無償非営利だったとしても、初音ミクの絵を描いてブログで公開したり動画を作るのはNG。だが、初音ミクは「非営利・無償利用」であれば原則OKとしている。

●非営利・有償の場合(同人誌等)も報告があれば原則認める「ピアプロ・リンク

また、有償の同人誌についても、「非営利・有償利用」として、タイトルと使用用途の報告などを行うことで原則的に認めている。これを「ピアプロ・リンク」と呼んでいる。今のところ、報告されてはねられた事例はない。

初音ミクだけでなく、ほかの姉妹ソフトについても同じライセンスを適用している。

(なんでこんなに細かく色々あるのかと思う向きもあろうが、私はこれはクリプトン社の貴重なラーニングの財産だと思っている。クリプトンの方達はずっと地道に「音」をやってきた方たちなので、オタクではなく、二次創作やパロディ、同人文化についてもあまり知らない「普通」の人達だったのだ。それが初音ミクを機に猛スピードで理解していき、あれを作って対処し、これを作って対処し、従来の出版社等のように「ダメ」って言ってしまえば簡単なところを、それだと育たない、もしくはグレーなものだらけの現状の二次創作世界を打破できないということで、すごい頑張って勉強して、色々作ってきたのだ。クリプトンは最初、ミクを非営利・無償の二次利用ならいいと思っていて、そしたらいきなりコミケでミクの同人や同人ソフトをガンガン売られていると知って、驚いて禁止して、総スカンを食らっている。そこから同人について勉強して、撤回して、改めてライセンス作りに乗り出した。おととし、ワンダーフェスティバルというフィギュアのイベントに行ったら、クリプトンの人とばったり出会った。ワンフェスでもファンによるミクのフィギュアはたくさん作られていて、クリプトンの方はそこでもそうやって日本のこの独特なサブカルとそこから生まれるクリエイティビティについて勉強しておられた。クリプトンのやってきたこと・学んできたことの軌跡は、日本の「CGM」について知りたい人達にとっての重要な教科書になるのではないかと思う。彼らは、元々コミケ等に行って「グレー」な二次創作文化に漬かってきてしまったという習慣がなく、今どうなっているかの現象とその原因を無垢な目で調べ、正面きって立ち向かって、前に進み続けているからだ。)

最後に宣伝。「初音ミクAppend」 という拡張音声ライブラリを4月下旬に発売。お楽しみに!

IMG_0554

●未来予想

ピアプロのオープン化。音楽制作はよりコモディティ化が進み、個人でオーケストラみたいなこともできるようになるだろう。

CGMの現在と未来 - 伊藤さん講演 (1/3)(動画)
CGMの現在と未来 - 伊藤さん講演 (2/3)(動画)
CGMの現在と未来 - 伊藤さん講演 (3/3)(動画)

■戀塚昭彦(@koizuka)さん(株式会社ドワンゴ)講演
「運営側から見たニコニコ動画の現在と未来」

スライドがさっそく公開されていました!

自己紹介。元々はBio_100%というチームでゲームを作っていた。ドワンゴで働いているが、在宅勤務でネット越しに仕事をしている。昔からネットが大好き。ニコニコ動画の「開発総指揮」という立場で、コメントの設計、コメントサーバの開発などを行ってきた。ニコニコ動画に関する情報を集めたりしている。現在もコアであるコメントの制御や動画配信の負荷制御などをやっている。

ニコニコ動画は時系列を持つコンテンツにコメントを同期再生することで祭りに参加できるウェブサービス群。中核は動画配信のニコニコ動画。ほかに、ライブ動画配信サービスのニコニコ生放送やニコニコ静画、ニコニコ実況等がある。2/19時点でID登録者は1583万人、モバイル会員476万人、プレミアム会員68万人(現在は70万人を超えている)。

ニコニコ動画のCGMとしての歴史。

コメントの時代(2006/12/12-2007/3/6)

この頃はYouTubeから動画を引っ張ってきていたので、ニコニコ動画の機能としては動画にコメントをつけるというところ。コメントが長いと流れ去ってしまうような設計にしたので、短くて面白いリアクション、突っ込み、感想、字幕、解説など様々な使われ方をした。弾幕やコメントアートのようにコメントで面白い使い方が模索され、共有され、職人も登場。この時期は弾幕狙いの動画もたくさん投稿された。

コメントで動画を楽しむ「場」の形成。動画をより楽しむために視聴者側が貢献できる環境が形成されていった。

また、作品を知る手段としてCGMとしては欠かせないリアルタイム性の高いランキング祭りに参加しやすい環境を作った。
(ちなみにここでニコ生アンケートが実施されていて、動画の認知経路はTwitterが51%とトップ。ランキングは23%でした。あとの選択肢はニコレポとフロッグ。私も昔はランキングに行ってたけど今は殆どTwitter経由。)

タグの時代(2007/3/6-2008/7/5)

この時期、YouTubeから切断されたので、自前で動画を投稿できるようにSmileVideoを開発。(γ,RC,RC2,SP1の時代。ちなみに私もγから。)当初はトラフィックが厳しかったので会員制にして10万人限定にした。

タグは他のサービスでも導入されていたが、ニコニコ動画ではコメントとタグが相互に言及するような現象が起きた。ニコニコ動画では、タグを動画の真上の一番目に付きやすい位置に配置している。また、ニコニコ動画のタグは1つの動画につけられるタグを10個までに制限することで、新陳代謝を促す。また、Wikiのように共同編集できるようにした(ソーシャルタギング)。その結果タグがめまぐるしく変化するようになり、トレンドができていく。ある動画をうまく表現するタグができると、それが別の動画にも広まっていった。


そんなときに2007年8月、初音ミク発売。DTM系作品の爆発が起きた。初音ミクが来た・来ないの動画なども(初音ミク来た来ない騒動のまとめ動画)。タグによる動画間ネットワークができていく。

こうしてユーザー数が拡大していったが、その分同一コミュニティでの衝突も目立つようになる。そこで、そうした人たちをそれぞれ分けることを目指し、コミュニティ機能を導入した。

コミュニティの時代(2008/7/15-2009/10/29)

ニコニコミュニティやニコニ・コモンズ、そしてニコニコ生放送も開始した。

時間→ニコニコ動画はいつでもOKだがニコニコ生放送は制約される。
インタラクティブ性→ニコニコ動画は少ないが、ニコニコ生放送はインタラクティブ性が高い。

ユーザーが増え、コンテンツ供給が増えたことで情報の洪水になり、情報にたどりつけない問題が出てきた。そこでコミュニティの時代からライフログの時代に入りつつある。

●ライフログの時代(2009/10/29-現在)

ニコニコ動画(9)から。ニコレポやウォッチリスト、Twitter連携、世界の新着動画やニコ生クルーズ、そしてニコニコ生放送のタイムシフト機能なども入れた。

●未来予想

濱野さんがニコニコ動画は擬似同期のおかげで「いつでも祭り」と評したが、そのいつでも祭りが拡大していくのではないか。ニコニコ動画は昔は過去すべてをネタにした。現在は現在のことを祭りにしている(ニコニコ生放送とか)。今後は未来をネタに祭りをするのでは。具体的には未来予測(データ分析による)や調整(予定を立てて関わる人を引き寄せる)、人を育てる・作る(技術や道具の共有・トレーニング)といった未来をネタに祭りが起きるのでは。

(ちなみにニコニコ生放送のコメントでは「どんだけ祭りが好きなんだよ(笑)」的なコメントが殺到。祭りに始まり祭りに終わる。愛すべき祭り大好き戀塚さんでした♪しかし我々が何気なく使っている機能や配置などの諸々の背後には、戀塚さんの様々な「設計意図」があるのだなということがよくわかりました。面白かった!)

CGMの現在と未来 - 戀塚さん講演 (1/3)(動画)
CGMの現在と未来 - 戀塚さん講演 (2/3)(動画)
CGMの現在と未来 - 戀塚さん講演 (3/3)(動画)

■濱野智史(@hamano_satoshi)さん(株式会社日本技芸)講演
「日本のネットカルチャーはどこへ向かうのか: ニコニコ動画の「擬似同期型アーキテクチャ」と「N次創作」の先に」



普段は社会科学者。ニコニコ動画については07年頃からずっと考察を続けている。

●今日の話の前提

日本にはCGMに関する歴史的・社会的背景があり、日本の特殊な現象であることにフォーカスした視点が必要なのではないかと思っている。

YouTubeとニコニコ動画を比較すると、同じ動画投稿サイトなのにこんなに違うのかと思う。YouTubeは普通に人間がいっぱいトップページに映っている。だが、ニコニコ動画には人がおらず、アニメ動画が多い。

CGMみたいな話は昔から言われている。70年代、アルビン・トフラーは第三の波で「プロシューマー」という概念を出している。社会学者のダニエル・ベルも脱工業社会の到来を予想した。

2000年代、「ネット」という情報インフラが登場して普及したことで、経済産業の構造が変化した。その中でフリーミアムとクリエイティビティを両立するという時代的要請に応えるべくCGMやUGCという概念が生まれてきた。しかし、そのような情報社会論だけでなく、日本でCGMを語る場合、オタク論としての側面もある。80年代にオタクという言葉が生まれ、コミケのようなものがあった。コミケはリアルバージョンCGMといえる。こうした数十年の歴史があり、それが2000年代に花開いただけ。日本人は昔からCGMをやっていた。(激しく同意。ちなみに私が同人とニコニコ動画と初音ミクと昨今のCGMやリミックスカルチャーと、角川歴彦さんについて2008年3月に書いてたブログ記事。あの頃からしつこく主張してたw)

●環境的側面

日本のCGM現象を理解するには、その環境を理解する必要がある。ニコニコ動画は「疑似同期型アーキテクチャ」を持っている。これにより、いつでも一緒に祭りができる。ベンヤミンは芸術作品には「アウラ」があり、今この瞬間しか見られないという物でないとアウラは感じられないと説いた。つまりライブ演奏なら良いが、レコードや映画はアウラを失わせてしまうと指摘した。

ところが、ニコニコ動画は擬似同期によって、今ここでコンテンツを体験するという経験の条件そのものを複製可能にした。20世紀は複製技術の時代だったが、21世紀はニコニコ動画の時代になる。戀塚さんは神。それをメディア史に残さなければならない。というか私が残します。(拍手喝采!!)

IMG_0557

今までの二次創作とN次創作の違い。今までは、ソースは一つ(例えばジャンプの漫画とか)で、それをみんなが二次創作していくという形だった。今のN次創作は複雑に絡み合って派生していく。

IMG_0559

こちらが「みくみくにしてあげる♪」を起点としたN次創作のネットワーク図。

IMG_0567

様々な形で展開していくN次創作。

IMG_0558

ニコニコ動画でN次創作が花開いたのはタグの仕組みに秘密がある。10個までの制約により書き換えられながら淘汰され、タグの編集で会話され、タグ戦争が起きることでタグが分散していき動画の解釈可能性が増大する。それまでのWeb2.0的なタグの仕組みとはまったく違うもの。

タグの仕組みは今までFolksonomyと言われていたが、ニコニコ動画はタグが流転するので、Fluxonomyという単語・概念を提唱した。あまり使われてないけど。ニコニコ動画や初音ミクのような日本独自のCGMが盛り上がったのは、ニコニコ動画の疑似同期性と流転するタグシステムが大きい。

IMG_0560


●未来予測

・文化的側面としては、ニコニコ動画や初音ミクが世界に進出できるのかということ。

・情報面で次の関心は、ユビキタス時代のニコニコ的アーキテクチャ。リアル空間がニコニコ動画のようになっていくかということ。コンテンツを作りながら消費するスタイル。現実でしゃべっていくことにコメントがつけられるか。リアル空間で祭り。

・経済的な関心では、N次創作を前提としたコンテンツビジネスのプラットフォームは構築可能なのかどうか。

・政治的な面ではキャラクラシー(初音ミク出馬)ということが実現できるかということ。政治演説や討論もVOCALOIDでやる。現実の政治家に期待できないので、政治家を二次元化しまう。政治家は初音ミクでいい。インターネット民主党とか。

IMG_0561


(濱野さんの講演はいつ聞いても面白い。毎回進化しているなーと思ってたら野尻先生も同様のことをtweetしてた!)

■パネルディスカッション
パネル討論「初音ミク、ニコニコ動画、ピアプロはどのような世界を切り拓くのか」


後藤真孝さん(司会)
剣持秀紀さん(ヤマハ株式会社)
伊藤博之さん(クリプトン・フューチャー・メディア株式会社)
戀塚昭彦さん(株式会社ドワンゴ)
濱野智史さん(株式会社日本技芸)

●後藤さんによる講演のまとめ。

IMG_0563


●海外展開について

剣持: 日本と同じやり方が海外で通用するとは思っていない。でも、海外に合わせるのではなく、こちらのやり方を海外の人に知ってもらい、認めてもらうということが大事。日本はコンテンツについては「ガラパゴスで結構」。日本で今起きてることを知ってもらう努力はしていきたい。

伊藤: ユーザーが作った作品がなるべくスムーズに世の中に出ていくための仕組みがピアプロ。朝思いついたメロディーが夕方には曲になって世界に広まっていくみたいな。コンテンツの流動性に興味がある。

FacebookやTwitterを活用して、日本の作品が海外で知られることは実際に起きてるし、これからどんどん広まっていくと思う。USの売り上げが倍になったのだが、きっかけはFacebookにコミュニティが作られて数万人が入ったこと。(公式ではないので閉じられてしまった)ピアプロのオープン化と話したが、将来的には世界で翻訳して多言語展開や、コンテンツのマッシュアップなどもあるかもしれない。

戀塚: 経営判断とシステム上でできることは異なり、自分はシステム面についてコメントする。海外展開をするときにできるアプローチはシステム的にいくつかある。海外とは異なる文化、異なる言語だと思うが、実はそうとも限らない。海外でも日本語読める人は結構いる。日本オタクにとって、日本語は「聖地の言語」。現実問題として海外からもニコニコ動画は結構見られており、現状で世界展開していると言えなくもない。

ただし、ニコニコ動画の仕組みは日本語に依存しており、それに合わせてデザインしている。他の言語でやった場合、デザインやUIも変えなければならず、難しい。一目で情報が読み取れる面積の問題もある。日本語と文字や文化が近いという意味で、台湾版のニコニコ動画は相当使われている。そういった形で広まっていくのが今見えている海外展開。

今後ユーザーを増やしていこうとしたときに、ほかの言語を取ろうとするのは経営判断としては必然。具体的な海外展開の検討はしたことはないが、イメージなどはしたことがある。

だが、処理能力の問題もある。動画はご存知の通りインフラコストが非常にかかり、現在は日本語だけでもかつかつの状態で開発をしている。海外ではYouTubeが席巻している状況もあり、対抗は難しい。

●初音ミクを外人に紹介するとどういう反応が返ってくるのか

後藤: 昨年サンディエゴで初音ミクとニコニコ動画を紹介した。会場の反応は興味津々で、日本独自のものは感じるが面白いという反応が多かった。

伊藤: 我々のお客さんはプロが多い。プロの目から見ると初音ミクやニコ動の良さがわかりづらい。スペックで見たときにローファイだから。現象としては面白いが、米国で流行るかどうかはわからないという意見が多い。クラブミュージックなどではいけるかもしれない。プロを狙わなければいいかもしれない。

剣持: NAMMショーに行くと頑張らなきゃなと思う。米国の楽器ショーではギター、ベース、ドラムで音楽をやってる感じ。コンピューターミュージックはあるけど、メインではない。まだ現実の楽器業界で大きく受け入れられるのは難しいが徐々に広まって欲しい。

戀塚: 海外の人がニコニコ動画を見たり、日本語のニコニコ動画にイベントの動画を上げたりはしているが、まだマイナー言語の壁を越えないとダメだという意見はあちこちで見られる。ニコニコ動画には機械翻訳は無理があるんじゃないか。ニコニコ動画には人がいっぱい来ている。翻訳できる人がいるなら、翻訳をユーザーに任せてしまうというのもあるだろう。

●濱野さんの提示したN次創作のコンテンツビジネスモデルは可能か

濱野: ニコニ広告はユーザーにお金を払っていない。ニコニコミュニティの機能にマイクロペイメントのような仕組みが出てきていいのに、なかなか実現しない。でも今それを一番実現しやすいのがニコニコ動画じゃないか。ニコニ・コモンズの派生ツリーを追えば、どの作品がどれぐらい貢献しているか可視化され、作者への配分にも使えるのではないか。

後藤: 音楽の分野では、コンテンツ同士の類似度みたいなものをある程度はかることができる。

伊藤: 損得勘定じゃなく感謝という規範。あとは経済的な規範。その接点をどう作るかという話。芸術家はお金を取るといやらしいみたいなところがあり、寄付でやっていた。ネットは芸術家だけでなく、一般人も物を作る。それが本当に解決可能な問題なのか考えることが重要。

濱野: 僕が一番好きなタグは「振り込めない詐欺」。ニコニコ動画が出てくるまではネットのやつらは金払わないけしからんやつと思われていたが、実際には払いたいと表明してる人がたくさん出てきてる。だからこそ決済機能入れて世界に類を見ないサービスにして欲しい。

後藤: コンテンツを見て感動したときにもっともっと感謝の気持ちを伝える手段が豊富でいい。

剣持: コンテンツを構成する要素がわかりやすい形で分離することで、新しいしくみが作れるのではないか。VSQファイルの差分をWikiのように表示するようなシステムにして、可視化して、分配などに生かすような方法論もあるのでは。

・最後に一言

剣持: 声と利用場面、ユーザー層の拡大という3つの軸を出した。それだけでなく、商品の品質はよくしていきたいと思っている。

伊藤: 自分の会社は札幌。CGMの動きは、地方にある会社やクリエイターにとって非常にいい現象。才能があっても東京に行かないといけなかったが、今後は各地でできる。作る側に優しい世界になってきた。こうしてコンテンツビジネスが歩んできた慣習が払拭されて、かつそれがマッシュアップされて多様化していけばいい。

戀塚: ニコニコ動画をたまたま作ってしまって、その上で起きているいつでも祭はとても楽しい。こういう楽しめる場所をもっと広げていければいいと思っている。

濱野: 1年前に出たイベントの動画を自分で見たら、早口で声もおかしくてイヤだった。そのあとしゃべりを訓練する教室に月1万円払って通った。そこでわかったのはとてもしゃべりは大変ということ。だから早くプレゼンをTALKALOIDで代用できるようにしたい。

後藤: CGMはスポーツや料理のようになってもらいたい。プロのスポーツ選手はアマチュアがその競技を始めるのを敵視したりせず、あくまで裾野が広がったと理解する。CGMもそうなればいい。プロとアマが混在して、創作や共有みたいな部分で協力していってもらいたい。


■掲載メディア

Internet Watch記事 "ニコ動や初音ミクの世界進出の可能性、N次創作のビジネス化は"



いやあ、本当に面白かった!! 登壇者の皆様、運営の皆様ありがとうございました。700名の会場が満席(ときどき立ち見が出たらしい)+ニコニコ生放送で約4000名、Ustreamで約1800名が視聴していたそうです。