2010年2月18日木曜日

Open Governmentについて

昨年ワシントンDCに行って色々取材をした件を全く書けていないわけですが
ちょっと絡むので備忘エントリーしておきます。

Government2.0やopen governmentと言ったときに色々な要素があるのだけれど、
Open Government Memo言うところの以下の3点が重要だと思います。

Transparancy(政府の情報をオープンにし、透明性を高める)
Participation(国民の対話を行い、ワシントン外の人々に政策立案過程への参加を促す)
Collaboration(政府間および官民連携によりイノベーションを促進する)

オバマ大統領のホームページBarackobama.comも、政権移行期間のサイトchange.govも現在の連某政府サイトwhitehouse.govも、オープンかつ国民の参加を促す仕組みが組み込まれています。

連邦政府の各種統計情報を公開するサイトとして、Data.govがあります。ただし政府は情報をもっていてそれをオープンにするところまではできるけれど、そこからデータをうまく使っていったり、マッシュアップしたり、使いやすいUIを作るのは民間の方が長けています。そこでApps for Americaというコンテストを行い、民間の人たちが政府のデータを使ってよいアプリを作って投稿し、上位の作品には賞金が贈られるようにしました。

各省庁もどんどん新しい施策を行っています。例えばFCCはFCC Connectというサイトで見せている通りFacebookやTwitter、FlickrやMyspace等、様々なチャネルで国民とコミュニケーションを行い、RebootFCCというサイトでデータの公開コミュニケーションチャネルを作っています。更にBroadband.govでは全米のブロードバンド政策について、OpenInternet.govではフリーでオープンなインターネットとそれがもたらすイノベーションや新規事業と雇用、国民の結束等について国民の意見を募集し、議論し、よい意見に投票して投票数が多かったものが上位に来るようなしくみを整えています。こういう取り組みを各省庁が行うようになってきているのです。

Government2.0カンファレンスを主催するTim O'reillyは「Government as a platform」と提唱しました。まさに現在、プラットフォームを政府が用意し、中身については国民参加で作り上げていく体制が整えられていると言えます。

先日、ダイヤモンドオンラインに「つぶやくだけの鳩山首相とは大違い!オバマ政権の政府支出“まる裸”大作戦」という記事が掲載され、話題を呼びました。

その中でUSASpending.govというサイトについて紹介されていたので引用します。
たとえば、右下に出てくる「2009年度請負い業者トップ5」というリストがある。つまり、昨年度政府調達の中でも契約料総額が最大だった企業5社が並んでいる。トップはロッキード・マーチンで、383億2781万6102ドル。その下にボーイング、ノースロップ・グラマン、ゼネラル・ダイナミックス、レイセオンが続く。
 ロッキード・マーチンの社名をクリックしてみよう。すると、契約料のうち入札によって得たものがどの程度で、指名契約はどの程度、また以前から継続されている契約料がどれくらいの割合を占めるのかを示す円グラフが出てくる。
 ロッキード・マーチンに払った契約料の製品分野別の内訳もあって、航空機、戦闘機、防衛ミサイルなどが金額とともにリストアップされている。政府のどの機関が契約を結んだのかも明らかにされている。ちなみに、海軍、空軍がトップ2だ。
 さらに、情報を辿ると、その契約金が落ちた選挙区はどこか、そしてその選挙区の議員名も記されている。企業と政治家、政府調達の関係が一目瞭然だ。


記事は更に続きます。

 オバマは大統領に就任してからは、インターネットとITの潜在力をさらに積極的に掘り起こし、いつまでも「つぶやく」だけにとどまってなどいない。(中略)鳩山首相にも、そろそろツイッター以外でITリテラシーを示してもらいたいものだ。


鳩山さんが上記記事を読んでおられるかどうかはわかりませんが、「Twitterやれやれっていうからやり始めたのに一ヶ月たったらつぶやくだけじゃだめって言われた(´・ω・`)」とか思われそうな気もしますが、正直世の中のスピードは速いので、どんどん進めないと更に遅れてしまいます。鳩山さんご自身がどうのというより、政府としてどういう目標・ビジョンを持ち、いつまでにどういうことを実現していくのかをはっきりさせて、それを政府なり省庁なりに実現させていってほしいと思います。道筋を立てるのは必要。


アメリカの例を続けます。

オバマ政権は昨年12/8のOpen Government Directiveで各省庁向けに(大変ざくっというと)「45日以内に3つの重要なデータセットを開示しdata.govに公開し、60日以内にOpen Governmentのゲートウェイページを設け、国民の声に答えるようにせよ」とのオーダーを出しました。(詳細はもちろんもっと細かいので記事自体をお読みください。)ちなみにこの指令の大項目は「政府の情報をオンラインに開示すること」「情報のクオリティを上げること」「オープンガバメントの文化を制度化すること」「オープンガバメントのための政策フレームワークを作ること」となっています。

また、プランの要素は「transparancy(透明性)」「participation(国民参加)」「collaboration(コラボレーション)」「Flagship Initiative(前述3つを網羅した取り組み)」「Public and Agency Involvement(国民や省庁の参加)」が必須とされている。ぶれませんね。これが大統領から全省庁のトップへの指令として出されているのです。

そしてそれに向けオバマ政権が省庁に対して出したマイルストーンはこちら。 ちゃんとデッドラインつきです。




2/6は省庁側がopen governmentのサイトを作る締め切りでありつつ、政権側が進捗を確認する締め切りでもありました。省庁に「やっておけ」と指令を出して任せるだけでなく、もう一歩踏み込んで政権側のチェックの義務も作っているわけです。

このオバマ政権のマイルストーンに従い、25の省庁がopengovernmentのサイトをローンチしました。そしてそれをホワイトハウスのブログで公開し、国民にフィードバックを求めています。「作ったからいいだろ」というものではなく、作ったものが国民の目から見て役に立つのか。見やすいのか。どうなのかを問うて、フィードバックを受けているのです。

25個のアメリカ省庁のopengovernmentのサイトのリストはこちら。殆どがIdeascaleというシステムを使っています。これは上述broadband.govやopeninternet.gov等でおなじみの「国民が意見を投稿し、よい意見に投票し、得票数が多い意見が上に上がってくる」形式のクラウドソーシング型ツールです。

各省庁の取り組みをホワイトハウス側がマイルストーン毎に「及第点・努力要・失格」という評価をしてホワイトハウスのサイトにアップしているのがこちら

上の方の省庁はなかなか成績がよさげですが。。。



おやおや?ダメ出しされてる省庁もありますね。



。。。とまあがんばらないといけない状況を政権側が作り出しているわけです。作ればいいってもんじゃない。

シンプルでわかりやすい目標を掲げて実現させるリーダーシップ具体的なマイルストーンとデッドライン実施した施策が本当に国民にとって役に立つのかという視点でチェックし、国民のフィードバックも必ずセット。そういう点もアメリカのやり方から学びたいです。


で、これらの元になったOpen Government Memoを作るためのブレインストーミングには、Govloopという政府系SNSが活躍しています。たまたま泊めてもらっていた友人宅にGovloopの社長が遊びに来ていたのでちょっと話を伺ったのですが、ここには政府機関で働いている人も、政治をよくしたいという思いをもったIT系の人たち(例えば Tim O'reillyさんやCraigslistを作ったCraig Newmarkさん等)も色々な人が参加して議論をしているとのこと。政府の人たちは政府のことはわかるけどITやソーシャルメディアのことはわからない。だったらITに詳しい人たちが政府に協力してあげよう、と。

日本だとITやネットは悪いもの扱いされることがあるような気がするけれど、そのパワフルな物を敬遠しているとそのパワーを使った外国にどんどん負けてしまう。パワフルなものは取り込むべきだし、わからないなら協力を仰げばいいと思います。

政党同士の争いとかもね。。。先日テレビでアメリカの何かの選挙(補欠選挙かな?)があって、その結果が色々揺るがして、もちろんどちらの党に一人増えるかで法案が通るか通らないかすごく重要なのだけれど、ある議員が「当選者は、民主党でも共和党でもない。今のアメリカの危機を救おうとしているアメリカ人の一人だ」という感じのことを言っていました。この危機意識と、政党を超えて団結して国家の危機を乗り越えなければいけないという意識は今の日本にも必要なはず。

先日の「ネットビジネス政策イノベーションフォーラム」はIT系企業のトップと政治家とアカデミックが集まって日本のネットビジネスとイノベーション政策について議論できてよい機会だったのではないかと思います。でも、年に一回じゃなくてもっとやるべき。民主党だけじゃなくて自民党も呼ぶべき。世耕さんとか。

場所も、国会の近くとかでやれば政治家ももっと参加しやすいのでは。ワシントンDC訪問中に、色々シンポジウムにも出席したのですが、国会議事堂の前に地下のカンファレンスルームみたいなのがあって、そこで政策シンクタンク主催のイノベーション政策のシンポジウムとかをやっているのです。そうすると忙しい議員さんもちょい抜けできる。ある議員さんは「どうしても行かなきゃいけないんだ。これこれこういう法案があって、僕はこうするためにこの件はどうしてもサインをしなければいけないから行ってくる!」とか説明してくれて、席を立っていきました。何が審議されていて彼がどういう意見かもわかってそれもよい。

ところでTwitterだけやればいいってもんじゃないという記事はあってそれはその通りなのですが、そもそもやらなきゃ始まらないわけで。日本でも色々な政治家が使い始めていてそれは素晴らしいのですが、私は実はまだ足りていないと思っています。「Twitterと政治」と一言で言っても3つパターンがあるのではないか。

1)政治家の利用
2)省庁の利用
3)政治的ムーブメントでの利用

1)政治家の利用

アメリカではオバマ大統領(@barackobama)やマケイン議員(@SenJohnMcCain)を始め多くの政治家がTwitterを使っており、その数は140人以上にのぼります。アメリカの政治家のTwitterリストはこちらの下の方。人数が少ないうちは数少ないTwitter議員に話題が集中しますが、人数が増えてくると「自分の選挙区の政治家がTwitterをやっているか」が重要になってきます。充分にTwitter議員が増えたアメリカではその威力が発揮できるわけです。例えばオバマ大統領のウェブサイトには”Tweet Your Senator”というページがあり、郵便番号を入力するとTwitterアカウントを知らなくても自分の住んでいる地域の議員にTwitterでメッセージを送ることができます。イギリスやカナダの政治家たちも多くTwitterを使っており、オランダでは議会の最中にTwitterを使った議員が議長から注意を受けるほど。日本のTwitter政治家の一覧はこちらのPolitterというサイト

2)省庁の利用

アメリカの省庁の多くは、複数のTwitterアカウントを使いこなしながら情報発信を行っています。リストはこちらの上の方。イギリスでは省庁向けにTwitter利用についてのマニュアルが配布され、積極利用が推奨されています。

日本での省庁の利用はまだまだ少ないですが、特筆すべきは二つあると思います。

まず一つが経済産業省のオープンガバメントアカウント (@openmeti)アイディアボックスという国民参加型のネット審議会的プロジェクトを実験的に立ち上げていたのですが、その成果を持って今度は2/23-3/15に改めてサイトをオープンし、ネット上で一般国民からIT政策に関する意見を募集する予定。サイトオープンまではTwitterで事前ブレストを行いたいとのこと。
アイディアボックスとは
産業構造審議会情報経済分科会のサイト
同分科会のミーティングのログ
当日の配布資料
※次回からはネット中継を行うそうです。
アイディアボックスサイトを制作するための契約内容・金額も公開されています。ソースもオープンにするそうです。
@openmetiからTwitterで説明があったのをブログにまとめられてました:
経産省の Twitter に掲載された、とても真摯なメッセージ [ #openmeti #scloud ]

ちなみに同サイトが参考にするために調べた海外でのオープンガバメント状況レポート
やるべきことはたくさんあります。

また、オープンガバメントギャラリーというサイトも作られ、日本におけるオープンガバメントの取組が紹介されています。その中で見つけた記述がこちら。経済産業省版Data.gov!

「経済産業省版Data.gov」 米国連邦政府のData.govのような、政府の統計等の情報を機械が読み込める形式で、検索性のよいポータルサイトから提供する仕組みを、2010年中に構築する方向で、現在検討中。


経済産業省による使用済み携帯電話回収促進実証事業「たんすケータイあつめタイ\(^o^)/」で"初音ミク"とのコラボした企画も載っています(笑)。そういえばこの件は英語ブログの方に書いたのでした。
Miku + Ministry of Economy, Trade and Industry

経済産業省だけがどんどん進んでいく。素晴らしい。どんどん先行事例を作って他の省庁を引っ張っていって下さい!

もう一つが総務省勤務の谷脇康彦さんの個人アカウント(@ytaniwaki)。

総務省のクラウド研究会、ツイッターで“パブコメ”募集
とか記事になっていますけど、元になっているのって谷脇さんの個人アカウントでつぶやかれたこのtweetですよね。

#scloud 総務省「スマートクラウド研究会」中間取りまとめ案を公表しました。3月9日までご意見募集中。このハッシュタグで自由にご議論ください。参考にさせていただきたいと思います。ツイッター使った政策議論を!http://ow.ly/165cQ


現在も#scloudでTwitter検索をすると色々出てきます。

で、既にこんなまとめを作られている方もおられます。
総務省 スマート・クラウドに対するパブコメと議論 on Twitter (まとめ) [ #scloud ]

物事を起こすのは一人一人の人間の力だなあ。谷脇さん、素晴らしい!
谷脇さんの最新記事はこちら。
動き出した新政権の情報通信政策 クラウド活用も重要課題に

以前Japan Times掲載して頂いた記事にも書いたのですが、日本には民意を伝える手段があまりなく、パブリックコメントという制度はあるものの民意が反映されるとは限らない。2007年のダウンロード違法化のパブコメの際は8,720個のコメントを集め、80%が反対していたにも関わらず法案は通されました。2008年の医薬品ネット販売の際も、2,353個のパブコメを集め、97%が反対していたにも関わらず法案は通過。「民意を問う」ことは大事だけれど、民意を聞くだけ聞いて、国民の労力を数千人分使っておいて「聞いてみただけ~♪」というだけならパブコメなんてやらなければいいのに!と腹が立ったものです。

Twitterを使って意見を取り入れるという取り組みは民間レベルだとソフトバンクの孫さんが「Ustreamスタジオを作ったら」という提案に2分半でやりましょうと即決。また障害者向け割引についてのTwitter経由での提案を受けて一週間で実現してリリースするという感動を与えてくれました。是非Twitterパブコメも今までとは違いパブコメを求めて終わりではなく、ちゃんと民意を受け止めて、実現するところまで期待したいと思います!

3)政治的ムーブメントでの利用

モルドバでは2009年4月に行われた議会選挙で不正があったとして抗議行動が起こった際に#pmanというハッシュタグをつけてTwitter上で抗議を行いました。更に2009年6月のイランの大統領選挙の際は、海外メディアが報道を制限される中、選挙に不正があったとしてTwitterユーザー達は#iranelectionというハッシュタグを使い、抗議の声を上げ、何が起きているのかを世界に向けて発信しました。

しかし、これは別に選挙不正など特殊な事情があるときに限るべきことではなく、Twitterを使って政治や政策の一定のテーマについて国民が語り合うことも意義深いと思います。そうした場に #scloud や #openmeti がなりますように。また、こうした取り組みが単発で出てくるだけではなく、鳩山政権としてのビジョンと戦略と共に、具体的なデッドラインのあるマイルストーンと共に、国民のフィードバックも反映されるような仕組みと共に、省庁横断のトップダウンがなされるリーダーシップが見られますように、期待しています!


なお、この記事の続きを書きました> Open Government-2